ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす「服」革命

発刊
2018年11月8日
ページ数
176ページ
読了目安
191分
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早く失敗することが大切
高い技術力を持つ工場と直接契約し、インターネットで直接販売を行うアパレルブランド「ファクトリエ」の創業物語。起業からの失敗や苦労が紹介されています。

工場発のアパレルブランド

ファクトリエは、一般的なアパレルブランドとは違う、風変わりなブランドである。まず服を売る店舗を持たない。販売コストを極力抑えるため、インターネット通販に絞って、お客さんに服を届けている。

最大の特徴は「メイド・イン・ジャパン」に徹底的にこだわっていること。国内工場の中でも、素晴らしい技術力を誇る工場とだけ契約し、こだわりに溢れたオリジナル商品を開発してもらい、心から納得できる商品だけを、定番アイテムとして販売している。

これまで「公開はご法度」とされてきた日本各地の工場の名前を、ブランド名としてタグにプリント。販売価格も工場に決めてもらう。

目指すのは「つくり手の思いを感じ、洋服を買ってもらうこと」である。

ファクトリエの誕生

フランスでは服を買う時、「どこの誰がつくったものなのか」という視点がとても重視されている。例えばエルメスでは、自社専属の職人を約3000人抱え、職人一人ひとりにシリアルナンバーを与えて、商品に刻印を入れている。一方、日本では値段やブランドには関心があっても、どこの誰がつくっているのか気にする人は少ない。「世界に誇れるメイド・イン・ジャパンのブランドをつくる」と決心し、まず日本の生地工場や縫製工場を巡って、現状を知ることから始めた。

アパレル業界では通常、工場の存在は、あまりオープンにされていない。しかも高品質な技術を誇る工場ほど、消費者には知られていない。多くの場合、製造契約を結んでいる高級ブランドから守秘義務契約という口止めをされている。高級ブランドは、ブランドイメージを保ったり、技術の流出を防ぐため、生地や紡績、縫製を担う工場を黒子のまま隠していた。

工場と直接契約して、彼らとともに生地を選び、パターンや縫製の仕様を考え、長く着ることのできるデザインの服をつくり、インターネットで販売しよう。そして工場で働く人たちが、もっと自分たちの仕事に誇りを持ち、その存在を買い手に伝えられる仕組みをつくろう。2012年、資本金50万円で会社を設立した。

失敗するのを前提に走る

まずは契約する工場探しからだったが、なかなか工場を見つけられなかった。服の産地と言われる地方を訪れ、公衆電話から現地のタウンページをめくっては、衣料や縫製などのカテゴリーで工場らしき名称を探し、電話をかけていった。しかし、「インターネットで衣料品を販売します。おたくで自社ブランドの洋服をつくりませんか」と持ちかけても、怪しまれるばかりだった。

工場を回って交渉を続けながら、商品を販売するサイトの準備や商品管理、配送などの体制を整える準備も、同時に進めていた。当然一人では手が足りず、7人の友人がボランティアで集まってくれた。売上ゼロで、自分の給料も出せない状況で、毎週末アルバイトをしながら、みんなに頼り切っていた。

最初の工場との契約は、世界87ブランドを手がけるシャツ専門工場のHITOYOSHI。最高品質のシャツ専門工場でつくられる、シンプルなメンズビジネスシャツ400枚がファクトリエ最初の商品だった。この商品第一号を売るために、クラウドファンデイングを使うと、1ヶ月で114万円集めることができた。そして、ファクトリエの公式サイトをオープンした。

しかし、何日経っても注文は入ってこない。サイトのアクセス数が1という日が続いた。300社に営業電話をかけて、「着こなしセミナー」を12社で開催し、何とか売り切った。大きなターニングポイントは「ガイアの夜明け」で特集され、全国放映されたことだった。その直後から注文が大きく伸びていった。