加速経済ベトナム 日本企業が続々と躍進する最高のフロンティア

発刊
2024年9月25日
ページ数
280ページ
読了目安
322分
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推薦者

成長するベトナム経済の現状と将来性
日系企業のベトナム進出を支援している著者が、ベトナム経済の現状と将来性について、紹介している一冊。
かつては安い労働力を使った製造拠点という位置付けだったベトナムは、既に人口1億人を超え、若年層も多く、中間層が育ってきており、有望な市場として注目されている。

現在のベトナム経済の概要と、ベトナムに進出している日系企業の事例が紹介されており、ベトナムにおけるビジネス環境のことがよくわかる内容になっています。

ベトナムの経済成長

ベトナムは人口が1億人に達している上に、平均年齢が31歳程度で若年層が多く、中間層が拡大している。かつて、ベトナムには安価な労働力を求めて多くの製造業が進出していたが、今やベトナムは市場としての魅力に満ちている。

コロナ禍の影響は甚大だったものの、経済は2020年2.9%、2021年2.6%のプラス成長を遂げ、2022年8%、2023年5%、2024年1〜6月の推定値は6.4%と好調である。政府目標としては2030年までは7%成長、2030〜2050年も6.5〜7.5%成長を果たしていくとしている。それにより、2045〜2050年には先進国入りを果たすことを目標に据えている。

 

ベトナムがこれだけ伸びた背景には、1979年の中越戦争が終結して以降、大きな地政学的なリスクが生じていないことがある。1986年のドイモイ政策(市場主義経済の導入)の開始を手始めに次々と効果的な経済政策を展開し、経済レベルに応じた政策を適切に講じ、FDI(外国直接投資)を巧みに取り入れながら成長を遂げてきた。

近年では、中国が外資規制を強化しているのに対し、ベトナムでは投資法の改正をこの10年で2回実施するなど、社会主義国でありながら外資に対する規制緩和を大幅に進めているのも特徴である。ベトナムは早い段階から外資に頼って成長してきた経緯もあり、そのあたりについてはかなりの先進性を持っている。

 

FDIに沸くベトナム経済だが、その下支えをしているのは日本である。日本からのFDIは常に上位に位置しており、約10年間、1位から4位を占めている。昨今は、地政学的なリスクから中国を敬遠し、新たなサプライチェーンや消費市場としてASEAN、その中でもベトナムを注視する傾向が強まっている。また、グローバル展開を目指すスタートアップなどはその1カ国目としてベトナムを選ぶ傾向も出てきている。ベトナムでは既に多数の日系企業が活躍しており、およそ3000〜4000社の日系企業が存在すると言われている。

 

ベトナムの市場性

ベトナムが投資先として支持されている最大の要因は、ベトナムの市場性にある。経済成長が続くベトナムだが、所得水準はまだまだ高いとは言えない。2023年のベトナム人の1人当たりの平均月収は496ドン(約3万円)と、成長が鈍化している日本と比べても1/10以下である。

しかし、多くの国民たちが経済成長を肌で感じているからこそ、富裕層のみならず、若者たちも消費意欲が旺盛で、ローンを積極的に組み、不動産や自動車、電子機器などを次々に購入している。顕著な例は、スマートフォンで、スマホの保有率は非常に高く、大勢がフル活用している。一気にスマホが普及したこともあって、スマホを活用した仕組みやアプリも著しく成長している。ライドシェアアプリでは「Grab」が圧倒的なシェアを誇っており、バイク便やフードデリバリー機能も有している。

 

2030年までにベトナムでは新たに3600万人が消費階層(中間層)に加わると予想されている。日本からも2020年にはユニクロや無印良品が進出して好調であり、2023年末にはニトリが進出した。また、今やベトナムの小売市場においてなくてはならない存在になっているイオンや高島屋も順調に成長しており、日系企業のテナントの受け皿としての役割を担うまでになっている。

 

中所得国の罠を回避できるか

発展途上国が、中間層の拡大を視野に入れるのあれば、「中所得国の罠」を回避しなければならない。「中所得国の罠」とは、経済発展により1人当たりGDPが中所得域に達した後、発展パターンを転換することができず、成長が著しく鈍化してしまうことを意味する。アジア開発銀行は「中所得国の罠」に陥った国では輸出製品が一次産品や労働集約的なものに留まり、多様化・高度化していないことを指摘している。

「中所得国の罠」から抜け出すには、一般的に次の3つが重要とされている。

  1. 生産および雇用の重点化・高度化
  2. 技術革新の推進
  3. 熟練労働者の教育制度の変革

 

ベトナムでは、人材が順調に育っており、IT分野では既に高度化の壁を乗り越えた印象がある。製造分野については、まだ労働集約型のビジネスモデルから脱することができていないが、IT分野がイノベーションを牽引すれば、2045〜2050年までには製造分野においても劇的な進化を遂げられるのではないか。