物事をスマートに短く表現する
チャット、メール、SNS。私たちは日々、言葉を聞き、眺め、読み、小さなスクリーンでさらに延々と言葉をついばんでいる。そのせいで脳は疲れ果てている。インターネットの普及により、情報の消費をめぐる行為は激変した。しかし、情報が氾濫する環境にあっても、私たちが文章を書き、情報を伝える方法はほとんど変わっていない。
こうした問題に対する解決策が、人々が発し、消費する言葉を大幅に減らすよう促す戦略「スマート・シンプル(賢明な簡潔さ)」だ。スマート・シンプルは、力強い言葉と短い文章、関心を集めるタイトル、シンプルな見た目、整理された論理展開によって、「読みとばされる文書」を記憶に残る「必読の文書」へと変える。
スマート・シンプル4つの原則
①「タイトル」で心をつかむ
記事のタイトルやメールの件名でも、SNSなどの競合から誰かの注意を引き離すには、短く強い語句が必要だ。
②「リード文」で一番大事なことを伝える
最初の1文は最も印象的であること。相手の知るべきことを伝える。単刀直入に、短く、鋭い文にする。
③「なぜそれが重要か?」で文脈を示す
私たちが実際に詳しく知っていることはわずかだ。誰もが、新しい事実やアイデア、見解が「なぜ重要なのか」について、いつも説明してもらう必要がある。
④「さらに知る」で詳細を伝える
相手が望む以上のことを読ませたり、聞かせたりしてはいけない。さらに知りたいかどうかの判断は相手に委ねる。そして、続く内容は、本当に時間を割くに値する内容にする。
これらは、どんな時も守るべき厳格なルールではない。アドリブを取り入れる余地がある。目的は特定の相手に情報を伝え、相手の心を捉え、意欲を引き出すことだ。鉄則は、常に相手にとってのベストを目指すこと。気が散りやすくなっている読み手にとって、一番明確で効率のいい構造こそがベストである。
読み手ファースト
まずは「相手の具体的なイメージ」と、「彼らが何を必要としているか」を考えるところから始める。スマート・シンプルを確実に達成するためには、相手に何を心にとどめて欲しいのかを明確に意識すべきだ。伝えたいことを理解してもらう一番の近道は、「伝えたいことだけ」を伝えることだ。
- 「伝えない1人の相手」に語りかける
- 心にとどめて欲しいことを「1つ」はっきりさせる
- 人間に向けて「人間らしく」書く
- できるだけ短い1文にして書く
- 「余計ないこと」は言わない
簡潔にするノウハウ
①相手の役に立つ
一般的な人が1つの記事や最新情報に費やす時間は平均26秒。その時間が過ぎた文章は見捨てられる。相手の時間を無駄にすれば嫌われる。
- 伝えるべき要点を「リストアップ」する
- 要点のリストを「1つか2つ」に絞る
- 要点と詳細は必要不可欠の内容に絞られているか本気で見直す
- 削除できる言葉、文、パラグラフがないか見直す
②一瞬でつかむ
一番重要なのは冒頭だ。最初に目に入る1文が何よりも肝心である。冒頭の言葉選びが、その後に続く何百もの言葉が読まれるかを決定づける。注意を引くフレーズかどうかを見極める確実な方法は、それが他人の書いたものだと想像し、果たして読む気になるか自問することだ。
- 「長いタイトル」「冗談・皮肉」「造語」「ビジネス用語」をやめる
- 「なぜその情報を伝えているのか」を1文で示す
- 声に出して読んで吟味する
③相手に知って欲しいことを1つだけ伝える
相手に知って欲しいことを1つだけ抽出し、力強い1文ではっきり伝えなければならない。さもなければ、誰の記憶にも残らない。
- 「一番大事なポイント」を突き詰める
- エピソードは省く
- 1文でメッセージを言い切る
- 「副詞」「弱い言葉」「曖昧な言葉」をそぎ落とす
- 最後に自問する
④「なぜそれが重要か?」を伝える
大半の人は「何が」重要かだけでなく、「なぜ」重要かも理解できないほどに忙しい。「なぜそれが重要か?」という見出しは、読み手の思考をわかりやすい文脈に落とし込む。
- 「なぜそれが重要か」と太字で表記する
- その情報が重要な理由を1文で説く
- 単刀直入にする
- タイトル、リード文、見出しのパートを通して読む
⑤さらに知る
スマート・シンプルを極めるには、最初の見出しの後に、すみやかに、読み手に親切な方法で、掘り下げた内容や詳細、ニュアンスなどを伝えなくてはならない。締めくくりのパラグラフとして「さらに知る」とだけ書いてリンクを張る。
- 太字の見出しで向かう方法を読み手に知らせる
- 「箇条書き」を多用する
- 際立たせたい見出しや単語、数字に「太字」を使う
- 短く区切る
- すぱっと終わる
⑥適切な言葉を選ぶ
「ほぼ適切な言葉と適切な言葉には蛍と稲妻ほどの違いがある」。
- できる限り短い単語を使う
- 鮮明で的確、具体的な言葉を使う
- 抽象的な言葉を避ける
- ぼやけた表現を避ける
- 能動的な言い方にする
- 歯切れのよい表現を使う
- すべての言葉を「総チェック」する