引き算思考 「減らす」「削る」「やめる」がブレイクスルーを起こす

発刊
2024年8月19日
ページ数
328ページ
読了目安
519分
推薦ポイント 8P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

引き算という思考回路を身につける
人は問題を考える時に「足す」ことを考えるが、「引く」ことをあまり考えない。問題解決には「足す」という手段以外にも「引く」という手段も重要な選択肢だが、それに気づかない人間の性質について解説しています。

人間の「引き算」が苦手である理由を理解することで、考える際に「引き算」という手段を持ち、思考の幅を広げることができるようになります。

人は引き算するより足し算しやすい

私たちはみな自分の生活、自分の仕事、自分の住む社会をより良くしようと努力する中で、圧倒的に「足し算」をすることが多い。物事を現在の状態から、こうあって欲しいと思う状態に変える際に、手段として常に選択肢に挙がるのが、既存のそれに足し算することだ。

「モア・イズ・ベター」も間違いないが、一方で、選択肢には「引き算」することもある。しかし、足し算による変化に比べ、引き算による変化は思いつきにくい。引き算の方が明らかに望ましい選択肢であった場合にも、人はこの別種の変化を考えないのである。これには次のような理由がある。

 

①生物学的背景

人は物事の現在のあり方を望ましいあり方に変える時、それが変わったのだという証拠を必要とする。引き算する行為はどれだけ有益だろうと、自分がやったことの証拠が残る見込みがほとんどない。人間は本能的に相対量を把握するために、引き算による変化の結果を正確に思い描くのを不得意とする。「レス」と「モア」に対する人間の知覚の偏りがなくなることはない。

 

②文化的背景

最古の文明は概ね「モア」で定義されていた。1日中食べ物を探し回る必要がなくなった人間は、次々と物を足していった。ピラミッド、建物、衣服、さらに法律、宗教、文字、社会構造や思想も足されていった。文明は、規模拡大のプロジェクトだった。私たちはみな、その「規模と精巧さが実際的な機能に必要な分を超えた」足し算の遺産を受け継いでいる。

 

③経済的背景

「レス」は資本主義市場では割に合わない。資本主義の明白な特徴の1つは資本蓄積で、それはどう考えても足し算である。生産者は取り去るという手法では儲からない。

 

もちろん、人が引き算を見過ごすからといって、引き算が常に最良の選択とは限らない。足し算と引き算は二者択一の問題ではない。自分に見えていない選択肢を見つけるには、足し算か引き算かを考えるのではなく、足し算と引き算の両方を考える必要がある。

 

引き算思考

体系を見るのは引き算にとって特に重要なことだ。よいものを足す時なら、前後関係をろくに理解せずにむやみに足していくこともできる。しかし悪いものを引く時は、先に悪いものを見つけて認識しておかないと引きようがない。引き算によって体系を改善するには、まずはその体系を見る必要がある。

 

系を変えるのに必要なのは本質を見つけることであり、それには細部を引き算する必要がある。不要な細部を引き算すると、どこでどう介入すべきかが明確になる。問題は何を残し、何を取り除くかだ。この時に大切なのが、系の目的を見つけることである。「その系が達成していることは何か」を問うことによって見つかる。

 

引き算の4つのステップ

引き算をするためのチェックリストがあれば、引き算が系においてどう働くかを見る段階から、その引き算を実際に使って系を変える段階に移行できる。

 

①改善しようとする前に引き算する

「モア」の前に「レス」を試してみること。はじめに細部を引き算して、変えたい系の本質を見つけることで、状況を改善することができる。

 

②先に引き算をする

先に引き算すると変化を起こす力が増幅する。一連の変化がある場合、大抵初めの変化の方が影響力が大きくて、変化を起こすコストが小さい。

 

③気づいてもらえるレスを貫く

十分に引き算をしていくと、最後にはそこにないものが物語を生む。「気づいてもらえるレス」を実現するには、大抵の場合、人に助けを求め、自分では気づけない「レス」を見出す必要がある。

 

④引き算したものを再利用する

引き算によって系を改善した場合には、改善された新たな系と、それに加えて、以前の系から取り去ったものが手元に残る。引き算したものを再利用することで、引き算ならではの利点を活かすことができる。

 

4つのステップを指針として、それぞれの仕事に取り組めばよい。