アイデアのスタート地点を変える
「お金があれば成功できるのに」と思っているマインドの人は、多くの場合お金があっても成功できない。アイデアとお金は関係しているようで、実は赤の他人だ。手持ちの資産、強みは何かを見つめ直すことで、お金をかけなくても、研ぎ澄まされたアイデアは生み出せる。
この時の思考法のコツは、スタート地点を変えてみること。誰もが当然だと思って通り過ぎる前提を変えることで新しいアイデアが生まれることも多い。
相手の立場で見る
どんな企画においても「視点を変える」ことが大切だ。特に「相手の立場に立つ」ことが重要である。ここで注意したいのは「相手のために」と「相手の立場で」は異なり、真逆の答えになることすらあること。相手のために、という思考には、自分に都合のいいように肥大化しやすいワナがある。「相手の立場で」は、それ相応に相手の情報が必要になるし、大きな視点から見て相手の状況を読み解く力が必要だ。
能楽ではそれを「離見の見」と呼ぶ。舞台には「我見(役者自身の視点)」と「離見(観客が舞台を見る視点)」がある。そして「離見の見」とは、役者が観客の立場から自分を見る視点、すなわち客観的に全体を見る力のこと。この3つの視点を意識することで役者は大成する。これはビジネスにおいても重要なスキルである。
いろんな角度から見る
三角形と思っても、上から見たら円錐かもしれないし、横に回ると三角柱かもしれない。一方向からだけでは物事の本質はわからないし、裏に未来への可能性が隠れているかもしれない。視点を変えることで予想外のカタチで商品が売れたり、新しい市場ができたりすることがある。
ルールを変えてゴールを目指す
何を大切なゴールと思うかによって、発想のスタート地点は変わる。「ルールよりゴールは何か」を考えるクセがつけば、既存のルールを逸脱したり、新しいルールをつくってでもゴールに向かえるアイデアを生むことができる。
かつて誰かがつくったルールは、時代や状況に応じて誰かが変えなければいけない。そうして新しいやり方が生まれれば、それが新しいルールとなる。「結局何をしたかったんだっけ?」への問いかけが、ルールを超えるアイデアを生むきっかけになる。
ルールや常識に囚われていると画期的なアイデアは出なくなる。過去の成功事例やよくあるやり方の模倣も同じく話題にならない。本気で話題にしたかったら、逸脱する勇気が必要だ。できそうなことから、「そんな馬鹿な!」まで考えて、一番心が動くものを探し当てる。
違和感を生む
「よい違和感」「ギャップ」をつくり出すことが、世の中で注目される鍵だ。いい企画、いい商品なのにさっぱりウケない、売れない場合、しばしば「違和感」に欠けている。
「セクシーな歌手にセクシーな歌を歌わせない」というエンタメの極意は、商品プロモーションやPRイベント、普通のビジネスにも通用する。注意すべきは、「変」ではなく「違和感」を求めること。ただ変わっているのではなく、「いいね」「なるほど」「しっくり」という共感も大切だ。
あたり前の組み合わせはアイデアではない。世の中の逆を行くことで話題になり、広がる。
良いアイデアからオリジナルを生み出す
優れたアイデアのエッセンスを吸い取り、アレンジしたり、何かと掛け合わせたりするのは良いこと。インスパイアされてオリジナルをつくればいい。そのためには、次の2つの思考ツールを使う。
①デコン
デコンとは「デコンストラクション」。つまりアイデアの解体をすること。気になるアイデアに出会ったら、何から発想したか、なぜ流行っているか、そのエッセンスを考える。ポイントは、自分が興味を持った流行だけを抽出することと固有名詞ではなく一般ワードにすること。
②ヨコテン
ヨコテン(水平展開)とは、デコンで因数分解した流行エッセンスを違う分野に展開すること。ポイントは、別ジャンルの仕事に似ているポイントを見つけて展開すること。
「できること」×「好きなこと」=アイデア
アイデアとは何かと何かの掛け合わせだ。奇抜なものを含めて大量にアイデアをつくり、そこから大当たりを選び抜く。
まず「解決する課題」を決め、2つの重なる三角形の中に、3ステップでワードを入れて混ぜる。
- 「できること」を左に書き出す
- 右に「好きなこと」を書き入れる
- それらの言葉を掛け合わせる
さらに、左側の「できること」の替わりに、今の商品とは「逆のこと」を入れてみると、違う角度からのアイデアが生まれる。
「世の中の不満」÷「企業の技術」=アイデア
「不満」という感情をベースに、ヒット要素の高いアイデアを生む。
- 左に「不満」を書き連ねていく
- 右に提供できる技術を書き出す
- 右と左をぼんやり見ながら「不満を技術で解決できそうなもの」を書き出してみる
右の技術を少し拡大解釈する方が、アイデアを実現するための発想も生まれやすい。