日本再興戦略

発刊
2018年1月31日
ページ数
254ページ
読了目安
316分
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日本をアップデートする方法
世界でも注目される科学者、落合陽一氏が、日本をアップデートする方法を紹介している一冊。テクノロジー、経済、教育などの観点から、今日本に何が必要かを説いています。

日本再興には意識改革が必要

日本を再興するため、世界を理解するために重要なのは「意識改革」である。集団に対する処方箋としての教育とテクノロジー、それを通貫するビジョンが必要である。

今の日本人の意識は、相当にネガティブである。「生産性が低い」といった話ばかりだが、今の社会システムのあり方であれば、生産性が低いのは当たり前である。我々の教育は、人に言われたことをやるのに特化していて、新しいことを始めるのには特化していないからである。むしろ、大量生産型の近代的工業生産社会ではそれで良かった。

国民に均一な教育を与えた上で、住宅ローンにより家計のお金の自由を奪い、マスメディアによる世論操作を行い、新しい需要を喚起していくという戦略によって、高度経済成長を成し遂げ、物質的に豊かになった。但し、今の状況でこの戦略を続けていくと、日本人1人当たりの生産性はどんどん下がっていく。機械親和性が低く、代替性の高い人類を生産する仕組みだからである。このまま高度経済成長モデルに拘泥し、「欧米」と言う幻想を追い続けていては、日本は再興できない。

西洋的個人から脱却せよ

日本の歴史と伝統を冷静に見つめると、欧州式の概念の中には、日本には合わないことも多いことがわかる。

①平等と公平
日本人はゲームがフェアであることは意識するけれども、権利が平等であることはあまり意識しない。こうした特徴は、民族的に均質な日本人が以前から持っている。江戸時代、代官が片方に片寄った裁きをすると嫌だと思う。一方で、士農工商という考え方はそもそも権利や地位の平等に反している。それなのに、当時の社会は、士農工商に対して違和感をさほど抱いていなかった。

②近代的個人
日本には「個人」によって成り立つ「国民国家」という感覚が薄い。江戸時代には、日本人は長屋に住んで、依存的に生きていた。我々は個人なんてなくても、権利なんて与えられなくても、対外的には大規模の戦争をせずに生きていた。それなのに、日本は自分から依存を切ってしまった。西洋輸入の「個人」を目指し、我々は過度に分断されるようになった。本来、江戸の日本には、100、200、300と言う複数の職業があって、そのうち何個かの職業を1人が兼任して、皆で助け合いながら、働いてきた。

これから日本が東洋的な感覚を土台にしてテクノロジーを生かしていくためにも、まずは西洋的個人を超越しなければならない。1人が1つの天職によって生きる世界観に我々は元々住んでいなかった。百姓とは100の生業を持ちうる職業のことである。

複数のコミュニティに依存せよ

これからの日本に大事なのは、いろんなコミュニティがあって、複数のコミュニティに所属しつつ、そのコミュニティを自由に変えられることである。どのコミュニティを選ぶかは人それぞれ。家族、会社、地域コミュニティ、趣味を基盤にしてもいい。1つのコミュニティに依存するのではなく、色んなコミュニティに依存すればいい。そうなれば、日本人の生活や仕事はもっと楽しくなるはずである。

教育制度から変える必要がある

我々は中途半端に個人、自由、平等、人権といった西洋的な理念を押し付けられた結果、個人のビジョンがぼやけてしまった。今の教育は「やりがいややりたいことがない」という自己否定意識を持った歪んだ人間を生み出してしまう。

教育を変えて日本人の意識を変え、地方自治を強化して、ローカルな問題を自分たちで解決できるようにすること。つまり、帰属意識と参加意識、自分の選択が意味を持っている実感を、それぞれの人々が感じ、相互に依存することから、日本再興は始まっていく。