お金が目的になった資本主義
お金には価値の保存・尺度・交換の役割がある。最初、「お金」は価値を運ぶツールだった。ただ「お金」が社会の中心になるにつれ、価値をどう提供するかを考えるよりも、「お金」から「お金」を生み出す方法を考えた方が効率的であることに、気づく人が出てきた。人を雇用して製品を作って市場で売って「お金」に換えてまた何かを買うよりも、「お金」に「お金」を稼がせる方が楽である。
価値を仲介するツールに過ぎなかった「お金」が、価値から分離して一人歩きを始めた。証券化などのスキームが生み出され、「お金」を金融商品として販売できるようになるとこの流れはさらに加速し、実体経済の消費とは関係のないところで「お金」だけがぐるぐると1人歩きをし続けるようになった。価値を効率的にやりとりするための手段として生まれた「お金」は、やがてそれ自体を増やすことが目的に変わっていった。
そもそも経済とは
経済はネットワークそのものである。個人同士が繋がって1つの巨大なネットワークを作り、その上でお金が人から人へ移動している。このネットワークの構成分子である人間を動かしているのは、各々の欲望・欲求であり、経済は個人の欲望・欲求を起点に動く報酬のネットワークである。この現代社会の欲望は、3つに分けられる。
①本能的欲求(衣食住、異性、家族などへの根源的欲求)
②金銭欲求(稼ぎたい欲求)
③承認欲求(社会で存在を認められたい欲求)
経済とは簡単に言うと「人間が関わる活動をうまく回すための仕組み」である。その中の1つの形態として、現代の貨幣経済や自由市場経済が存在している。
人が3人以上存在していて生きるための活動を行っていれば、そこには必ず経済の要素が入ってくる。例えば、生産活動をするために大勢の人が集まってくる「企業」も経済システムと言える。「Webサービス」「商店街」「サークル」といったものも1つの小さな経済システムと考えることができる。
そして、手軽にネットでサービスを作って世界中の人に使ってもらえるような時代になった今、経済は「創り上げていく対象」に変化しつつある。
発展する経済システムに必要な要素
「経済システム」は、大前提として自己発展的に拡大していくような仕組みである必要がある。誰か特定の人が必死に動き回っていないと崩壊するような仕組みでは長くは続かない。そこには次の5つの要素がある。
①インセンティブ(報酬が明確である)
②リアルタイム(時間によって変化する)
③不確実性(運と実力の両方の要素がある)
④ヒエラルキー(秩序の可視化)
⑤コミュニケーション(参加者が交流する場がある)
さらにこの「経済システム」に安定性と持続性を持たせるには、次の2つの要素も必要である。
①寿命
経済システムは何十年、何百年と運営されることで階層の固定化といった「淀み」の発生が避けられない。経済は時間が経つほど特定の人に利益が集中する。最初から完璧なシステムを作ろうとせず、寿命が存在することを前提にし、寿命がきたら別のシステムに参加者が移っていけるような選択肢を複数用意しておくことで、結果的に安定的な経済システムを作ることができる。
②共同幻想
参加者が共同の幻想を抱いている場合、システムの寿命は飛躍的に延びる。国家であれば倫理や文化、組織やサービスであれば理念や美学などが該当する。
これらの要素をうまく取り入れている典型的な例がビットコインである。新しいテクノロジーの発達によって、経済は住む対象ではなく「作る」対象に変わりつつある。今度、お金が価値を媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつある。