ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望

発刊
2018年4月25日
ページ数
320ページ
読了目安
535分
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偉大なる起業家・投資家の哲学
ペイパルの共同創業者であり、フェイスブックを創業期から支えた投資家でもあるピーター・ティールの哲学と思考を紹介している一冊。

ピーター・ティールとは

シリコンバレーでは、ピーター・ティールは偉大なテクノロジーのパイオニアで、しかも卓越した知性とビジョンを備えた人物とみなされている。彼は3つの世界的企業に決定的な影響を及ぼしている。世界最大のオンライン決済サービス、ペイパルの共同創業者として。世界最大のSNS、フェイスブックを創業から支える、初の外部投資家として。そしてCIAやFBIを顧客に持つビッグデータ解析企業、パランティアの共同創業者として。

彼のペイパルからは、イーロン・マスク(テスラ・モーターズ)、リード・ホフマン(リンクトイン)、ジェレミー・ストッペルマン(イェルプ)をはじめ、現在のシリコンバレーを代表する起業家が次々に生まれている。彼らは「ペイパル・マフィア」と呼ばれ、ティールはその首領としてその名を轟かせている。

ティールの世界観

大成功した投資家の投資哲学は、呆れるほどシンプルだ。最も成功した存命の投資家ウォーレン・バフェットに「能力の輪」という有名な言葉がある。「投資は自分が理解できている範囲に絞れ」という意味だが、ティールにとってその「輪」とは、「スタンフォードから半径約5km以内」だ。ティールはここで起業家としての基礎を築いた。

ティールの世界観と、ビジネスや投資判断の流儀に決定的な影響を与えたのは、スタンフォード大教授だったフランス人哲学者、ルネ・ジラールである。ジラールの思想の核にあるのは模倣理論と競争だ。ジラールによれば、人間の行動は「模倣」に基づいている。人間には他人が欲しがるものを欲しがる傾向がある。従って模倣は競争を生み、競争はさらなる模倣を生む。

ティールはジラールの知見から、優れた起業家・投資家の本質を学んだ。「人は完全に模倣から逃れることはできない。でも細やかな神経があれば、それだけでその他大勢の人間を大きくリードできる」とティールは語っている。

ティールは「独占主義」をモットーにしている。他人と競争するのは、彼にとっては愚の骨頂だ。彼にとって「競争」とは、それに巻き込まれた時点で負けなのだ。彼は全く新しい市場を切り拓いて独占する企業を高く評価する。グーグル、フェイスブック、マイクロソフトである。これら企業の共通点は、独占的な立場にあること、著しく高い利回りを達成していることだ。

ティールの投資哲学

逆張り思考の投資家にとって重要なことは何か。並外れた結果を狙うなら、踏み固められた道ではなく、道なき道を選ばなければならない。ウォーレン・バフェットは、絵に描いたような逆張り思考の持ち主だ。彼にとって市場の下落とパニックは幸福感を意味する。但し、バフェットは株式市場の「特売」で、すべての株を買い漁るのではなく、独自のリサーチで納得した企業に狙いを定めている。

成功する逆張りのアプローチとは何か。ティールが立ち上げたファウンダーズ・ファンドのパートナー、ブルース・ギブニーは「何かに左右されない考え方」を勧めている。但し、これには危険があり、「他の誰とも見解が一致しない」結論に到達することもある。

ティールは、素晴らしい企業は常にその背景に「秘密」があると考える。ページランクのアルゴリズムを公開していないグーグルや、レシピを極秘としているコカコーラは、その第一原理に秘密が隠されている大企業のいい事例だ。ティールによれば、成功するスタートアップの鍵は、「唯一無二であること」「秘密」「デジタル市場で独占的ポジションを確保していること」である