数字の翻訳 スタンフォード経営大学院教授の「感情が動く数字」の作り方

発刊
2024年6月5日
ページ数
200ページ
読了目安
312分
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数字を使ってうまく伝える方法
単純に数字だけを示しても、相手は動かせない。数字を相手にわかりやすい形式に変換し、伝わるようにするためのポイントが紹介されている一冊。

プレゼンや資料を作成する際に、何気なく使っている数字も、相手に伝わる形に変換することで、メッセージが大きく変わることに気付かされます。数字さえ使っていれば、説得力が増すというものではなく、伝えるには様々な工夫が必要だということが理解できます。

すべての数字を「翻訳」する

人間の脳は、小さい数字を処理するように進化した。数字が大きくなればなるほど、人は数字に鈍感になる。これは「心理的麻痺」と呼ぶ現象だ。数字を扱うための文化的基盤が発達しても、人間の脳は生物学的には何も変わっていない。そのため、人間の直感に訴えるような経験に「翻訳」しない限り、数字は頭から抜け落ちてしまう。

データベースに入れるならそのままの数字でいいが、議論やプレゼンテーションで数字を使う場合は、どんな時も必ず、人間の理解できる言葉に翻訳しなくてはならない。翻訳は情報の質を高めるだけでなく、人との絆を深めるのにも役に立つ。

 

①数字を避ける

数字の翻訳のコツは「数字の使用をなるべく避ける」ことである。数字がなくても意味がはっきり伝わるような、具体的で鮮やかで意味のあるメッセージに翻訳すること。

ex.太陽系最大の山であるオリンポス山は、底面積がアリゾナ州やイタリアの面積とほぼ同じ。標高はあまりに高く、普通の大陸横断の飛行機が山の中腹にぶつかってしまうほどである。

 

②「1」にフォーカスする

数字を理解してもらうための一番手取り早い方法は、相手にとって馴染深い、単純なものの一部分に焦点を当てることだ。全社員の中の1人。全住民の中の1人。1つの企業。1つの取引。1年の内の1日。

本当に必要なのは、相手が理解できる大きさの数だ。「1」の力を借りて、大きな問題の小さく日常的な一部分にフォーカスすれば、状況を改善できる可能性を示すことができる。

ex.アメリカ連邦政府の債務残高は27兆ドル、国民1人あたり8万2000ドルである。

 

③相手にやさしい数字を使う

数字や番号、名前など、7個以上のものを覚えようとすると、記憶があやふやになり始める。数字を相手にやさしくするコツは、次の3つのルールで回避できる。

  1. シンプルが善:正確さより適切な概算が役に立つ方がずっと多い。丸めた数字を使う方が正確に思い出してもらえる。
  2. 「整数」を使う:1未満の数字はバスケット方式(ex.500人の内1人)を使えば、整数の用に感じてもらえる。
  3. 専門家相手に話す場合は敢行を優先する:特別な訓練を積んだ人には、相手が馴染んでいる形式の数字を示す。

 

なじみやすく具体的な「スケール」に変換する

メッセージを素早く理解してもらいたいなら、相手がすでによく知っている物事を使って説明するといい。効果の高いメッセージは、相手に余計な計算をさせない。

 

①「ほどよい尺度」を探す

最高の翻訳は、イメージしやすい尺度と単純な倍率の組み合わせである。相手がよく知っていて、比較したいものと同じくらいの大きさの尺度を考えるといい。地元の名所や、相手の専門分野で使われるもの、ニュースのネタなど、相手がよく知っているものを探す。

ex.ビデオゲーム業界の市場規模は、映画業界の4倍以上、音楽業界の約8倍である。

 

②具体的なものに変換する

問題を説明する時、抽象的な数字を使う代わりに、具体的に感じられるかたちに変換する。具体的な物事は理解しやすく、記憶にとどまりやすい。相手の心を揺り動かすためには、具体化だけで満足せずに、できるだけ鮮明なイメージを示す。

ex.この電線の長さは、1マイクロ秒間に電気信号が伝わる距離。300m、サッカーコート約3個分の長さである。

 

③数字を違う角度から捉えなおす

パッと見てわかりにくい数字や計算、比較を他の種類の量、例えば距離、体積、密度、速度、温度、金額、時間などに変換して、わかりやすくなったかどうか見てみる。

  1. 時間を金額に変換する
  2. 確率を「数えられるもの」に変換する
  3. 抽象的な数字を「もの」の数に変換する
  4. カロリーを日常的な行動に変換する
  5. 状態を「高さ」に変換する

 

④ヒューマンスケールに変換する

実際に経験できないほど大きいものや小さいものを理解するには、「人間のスケール」に変換するといい。

ex.地球上のすべての水が2ℓのペットボトル1本分だとすると、人間が飲める水はほんの数滴でしかない。

 

感情的な数字で人々の考え方や行動を変える

①感情に「相乗り」して無味乾燥なデータを避ける。

  1. バスケットを小さく揃える
  2. 身近で鮮やかな「比較対象」を使う
  3. 数字を具体的で鮮明にする
  4. 適切な比較対象を選ぶ

 

②数字を「展開するプロセス」に変換して「麻痺」を防ぐ

人間は多くのものを意味のあるものとして捉えるのが苦手だ。最初の1億円を稼いだ時には感動しても、それが6回も続けば感動は薄れ、57億円に届いた時は気づきもしない。大きな数字を「すごい」と思ってもらうには「展開するプロセス」に変換するといい。

 

③「アンコール」をする

人は一度に多くのデータを与えられると、すぐに大きな数字には鈍感になり始める。だが一部のデータを示して強い印象を与え、それから残りを「アンコール」として示せば、どちらも深く受け止めてもらえる。