rethink:再考する
①1つの考えを、もう一度考えなおすこと。②物事について、考え方を変えること。
最初の電気自動車は1837年に作られた。19世紀の終わりには、電気タクシーの一団がロンドンの街を走り回っていた。20世紀に入る頃には、アメリカでは3万台を超える電気自動車が登録されていた。電気自動車はガソリン車よりもはるかに人気があった。騒音が小さく、有害な排気ガスが発生しない。ところがそうした車の生産は10年余りの内に減少し、最終的に中止となった。
現代の電気自動車は素晴らしい着想であり、新しい技術によって存続の可能性が高まったものの、新しいアイデアという訳ではない。創造性とは、異なる分野の既存の考えを組み合わせる能力とも言われる。だがそれは、見過ごされていた1つの考えが、実は理にかなっていたのだと気づける想像力でもある。
アイデアは常に動き続ける
革新者は過去を蘇らせ、改良することで物事をよりよくすることもままある。1つのアイデアに対する認識は、時間と共に変化する。それが再発見を促すことになる。馬車によって引き起こされる渋滞や汚染の問題を考えれば、電気自動車は良いアイデアだった。しかし、安上がりなガソリン車のパフォーマンスを考えると、それほど良いアイデアだったとは言えない。しかし、バッテリー技術の進歩が現代の気候科学とあいまって、問題のあるアイデアを極めて優れたものへと変えた。
アイデアとみなされるものは、それ自体が再考の対象である。そして、私たちがアイデアというものの捉え方を再考しなければ、途方もない可能性を見逃すかもしれない。
但し、過去のいたるところから現代的な面白いアイデアが見つかるのではないかと期待したくなるかもしれないが、識別には注意を払わなくてはならない。再考する技術、そして再発見というのは、権威や知識、判断、善悪について私たちが抱く観念や、思考するプロセスそのものを問いただすことに他ならない。アイデアは、時の中に生きて考える人々から生まれ、何世紀も先へと受け継がれていく。同じアイデアが、ある時代では悪となり、別の時代では善とされるかもしれない。
アイデアの世界は、常に動き続ける対象だ。アイデアを決定的な判断のできる静的な思考の集まりと捉えることはたやすい。だが、それは必ずしも正確ではない。アイデアは物事であると同時に過程でもある。繰り返しアイデアを再考しなおさなければ、本当に考えていることにはならない。
優れたアイデアをどのように見分けるのか
新旧のアイデアについて考える際、懐疑論者の態度を取り入れると、もっともらしく見えるけれど欠点のあるアイデアに取り込まれるのを避けられるだけでなく、私たちは自由を手にして、可能な限り最高の思索者になれる。
私たちは信念を保留することにより、懐疑論的態度の方が建設的で生産的な状況で即座に判断を下してしまう危険から守られる。認知バイアスの危険を知ったら、それをどうにかしなくてはならない。競合できるアイデアを調べる間、判断をできるだけ保留する。そうすることで「自分が知っていると思っていたことに、自信をなくしていく」。そして、自信が減っていくことにより、新しいものの見方をするスペースがひらける。自分自身の認知バイアスとの闘いでは、信念を保留する能力が、私たちの持つ最強の武器かもしれない。
信念の保留を維持することによって、1つのアイデアを、もしかしたらもっと有意義かもしれない角度から眺める時間が生まれ、おそらくはその継続的な力を再発見することになる。