Mine! 私たちを支配する「所有」のルール

発刊
2024年3月21日
ページ数
384ページ
読了目安
691分
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所有するとはどういうことなのか
「早い者勝ち」「保有している」「自分が働いて獲得した」など、何かを所有するというルールは当たり前と思えるが、実際にはそうではない。
希少資源を取り合うためにこれまで当たり前だと思っていた所有権の原則は、テクノロジーの進歩や、新たな希少資源の登場などにより、曖昧になってきている。

社会にある所有のルールと、そこにある問題とは何かについて学ぶことができる一冊です。

所有権の基になる6つのルール

何かを所有するということはどういうことか。大方の人が持っている知識の大半は誤りである。政府も企業も普通の個人も「誰が・何を・なぜ」所有するかのルールをのべつ変えている。その度に勝者と敗者が生まれる。歴史はそれを繰り返してきた。

 

価値のある資源が希少になると、人間は一段と激しくそれを争うようになり、自分に都合のいい所有権の解釈を相手に押し付けようとする。希少資源の最初の所有者になる時に根拠として持ち出されるものは、以下の6つの格言で網羅されている。

 

①早い者勝ち

早い者勝ちは、原始的・直観的な公平さの観点からも望ましい。しかし、早い者勝ちには決定的な欠陥がある。先頭になれば得られる価値は大きく、所有権ルールを操作する術を心得ている者なら誰でもその価値を獲得できることだ。

 

②占有は九分の勝ち

「私が今持っているのだから私のもの」は、最も原始的な所有権の根拠である。物理的占有が意味を持つのは、信頼があってこそである。占有は裁判で証拠の裏付けとなるような事実ではないし、法律がそれを規定しているわけでもない。

 

③自分が蒔いた種は自分で収穫する

「私が頑張って働いたのだから私のものだ」という主張は、所有権を正当化する第三の基本的な要因となっている。労働と報いのこの密接な関係は、はるか昔から存在する。しかし、誰のどんな労働が所有権の根拠となりうるかを決める価値中立的な方法など存在しない。異議申し立ては十分に可能だ。

 

④私の家は私の城

「明らかに自分のものとわかっているものに付属するものは全て自分のものだ」という主張は、所有権の基本原則である。しかし、新しい技術、人口増、資源の希少化といった要因が生じるたびに、付属の原則に基づく所有権の範囲は再検討を迫られることになった。土地所有者は上からも下からも範囲を狭められるだけでなく、両側からも内側からも圧迫を感じるようになってきた。

 

⑤私の身体は私のもの

今日では、全ての人に自己所有権を認めることがほぼ全世界で確立されている。だが一方で、医療の進歩により臓器や細胞を身体から断ち切って新たな資源として利用することが可能になった。こうした生身の身体に由来する資源は、売買可能な世俗の資源なのか。どの国も決める必要に迫られている。

 

⑥家族のものだから私のもの

多くの財産は、家族の人生の決定的瞬間にその所有権が移転される。死はその1つだ。資産は結婚を機に加わり、離婚すれば分割される。家族所有される資産は極めて範囲が広く、ルールは不透明極まりない。

 

所有権に関するルール

ドローンを飛ばす時、または自宅のプライバシーを主張する時、腎臓の売買に賛成または反対する時、列に並んで順番が来るのを待つ時または押しのけて前へ出る時、私たちは否応なくこの6つのどれかを持ち出して権利を主張することになる。

しかし、これらの申立てはどれ1つとして完全には正しくない。なぜなら、根本的なところで所有権を二元論で見ているからだ。20世紀になると、所有権に関する議論は単純な二元論では片付けられなくなる。私有財産と公権力の介入との間の曖昧な境界が激しい議論の的になった。今日では議論の対象が再び変化し、係争の多くが個人所有者対個人所有者の対決になり、6つの格言は変化してきている。

 

所有権争いとは、6通りのストーリーのバトルである。これは選挙運動中の候補者たちのバトルにそっくりだ。どちらも周囲の支持と信頼を勝ち得ようと戦いを繰り広げる。重要なのは6通りの根拠をよく理解し、所有権を設計する手段と知識を身につけることだ。そうすれば、自分の都合のいいように説得力のあるストーリーを練り上げることができる。

所有権争いを規定する正当で自然な論理など存在しない。但し、争いを解決しうる選択肢には優劣がある。そして、それを選べる立場にない場合、誰かが代わって選ぶことになる。

 

所有権に関するルールは、すべての場面で勝ち組と負け組を作ることになる。貴重な希少資源の所有者は、強力なリモートコントロールを行っている。彼らは、利用者を自分の狙い通りに行動させるようなルール作りを常に試みる。それは、利益を最大化しトラブルを最小化することが目的だ。

所有権の定義をちょっとばかり変えて、所有権を設計することは、人々の行動を知らない内に決定的に操作するソーシャルエンジニアリングの一手法だと考えるとよい。希少資源の所有者が意図的に自分の行動を操ろうとしていると気づいたら、そのリモートコントロールを逆手にとって自分に有利になるようにすることも、公共の利益に寄与できるようにすることも可能だ。