AI vs 銀行員 金融ビジネスのトランスフォーメーション

発刊
2024年3月26日
ページ数
240ページ
読了目安
246分
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推薦者

銀行の未来予測
メガバンクの新卒採用の縮減や一般職の廃止、支店の統廃合など、銀行のリストラが進む背景を解説し、今後AIによって銀行業務がどう変わっていくのかを予測している一冊。

生成系AIの登場によって、今後ますます銀行業務においてAIが導入されると解説し、それぞれの業務がどのように変化し、自動化されていくのかが紹介されています。近未来の銀行がどうなるのかについて、詳しく考察されています。

銀行の大リストラ時代

銀行の店舗数、ATMの数、人員は縮小傾向にある。「ITによる業務効率化」と「キャッシュレス決済の普及」の大きく2つの要因から「銀行離れ」が進み、リアルな接客を行う店舗の必要性が薄れてきていることが、その背景にある。
一方で、新たな融資先の開拓に伴う審査項目の増加や、アンチマネーロンダリング対策におけるチェック項目の増加など、銀行業務は複雑さを増している。こういった「規模の縮小」と「業務の複雑化への対応」という相反する2つの課題への対応に追われているのが、今の銀行の置かれている現状である。

 

銀行が抱えるこれらの課題を一気に解決しうるテクノロジーが、2020年以降に大きく進化した「生成系AI」である。この生成系AIの登場が決定的なトリガーとなり、今後、支店や人員はますますいらなくなり、リストラがさらに加速していく。

メガバンクでは窓口業務を担う一般職については新規採用を行わない方針を示している。一方、デジタルなど専門人材の採用の強化を図っている。こういった動きには、もはや富裕層に対して資産運用のアドバイスをする専門家か、M&Aや財務会計など会計の専門家か、テクノロジーの専門家の3種類しか採らない、という明確な姿勢が表れている。「今後、意思決定をしない人材は必要ない」というシビアなメッセージがうかがえる。

採用数の大幅な縮減と一般職の廃止という動きは、今後も大きなトレンドとしてメガバンクから地方金融機関へと広がっていくだろう。

 

複雑化する銀行業務

銀行はリストラを進めて規模を縮小する一方で、それに逆行する銀行業務自体の「複雑化」という悩みを抱えている。金融機関では貸出残高は増加傾向にあるものの、預金量がそれ以上に増加している。金融機関は集めた預金を貸出することで収益を得ているが、資金余剰が発生している。そのため、各銀行は融資案件を増やさなければならず、これまでは対象として見ていなかった個人や法人も、融資先として開拓する必要に迫られている。

 

例えば法人融資であれば、創業間もないベンチャー企業なとに対して、新たな融資先として目を向けざるを得ない状況にある。その際、財務諸表など定量データだけでなく、会社の将来性の判断や経営者からのヒアリング内容、ビジネスの新規性などといった定性的な内容が、審査の際にますます重視されるようになっている。今までにない審査の基準や項目が増えたことで、融資審査が複雑化している。

この他にも金融庁に報告する各種規制の項目が増えている。顕著な例としては、アンチマネーロンダリングに対する規制が強化され、銀行側がチェックしなければならなくなっている。

 

AI vs 銀行員

今、銀行はAIを入れてリストラを推し進めないことには、組織を維持すること自体が困難になっている。加えて銀行業務は複雑化しているので、余計にAIを導入する必要に迫られている。

生成系AIの登場で、AIでできるタスクの領域は飛躍的に拡大している。「AI vs 銀行員」という対立構造では、ほぼすべての領域でAIが圧勝する状況になっている。生成系AIを活用したチェットボットでは属人的な接客の質のバラツキも解消され、経験の有無にかかわらず、質の高い接客が実現される。また、生成系AIは銀行業務における書類作成や書類チェックや監督省庁への報告など、自分たちの業務オペレーションのチェックも自動で、かつ正確に処理してくれるので、人為的なオペレーションミスがほぼ解消され、生産性と精度が飛躍的に向上する。AIがどんどん学習することで複雑化する業務もすぐにこなしてくれる。

 

銀行業務においてAIの導入が進んでいくと、業務がどんどん均質化の方向に向かっていく。つまり、利用者のニーズや特性に応じてオーダーメイドで対応する必要がなくなる。すると、極端に言うとお客様が書類上の存在だけになる。そして、均質化が進むとAIで処理できる領域はさらに拡大していき、AI導入によるレバレッジがますます効いてくる、というスパイラルが生まれる。

 

リテール、ホールセール、金融犯罪対策と、ほとんどすべての銀行業務はAIの導入による高度化、省力化、そして人への置き換えが可能になった。そう遠くない未来、銀行の各支店には支店長を含めて2、3人がいれば、あとは複数台のPCでAIがフル稼働し、大量の審査・融資案件を自動で処理してくれる未来が実現するだろう。

現場で働く銀行員の役割は、稼働するAIの運用・管理がメインとなり、その多くは「システムエンジニア」になる。つまり、AIを部下として仕事をさせることができる銀行員だけが生き残る。