因果関係と相関関係を見極めよ
経済学では「2つの事柄の内、どちらかが原因で、どちらかが結果である」状態を、因果関係があるという。一方で「2つの事柄に関係があるものの、その2つは原因と結果の関係にないもの」のことを相関関係があるという。相関関係の場合、「一見すると原因のように見えるもの」が再び起きても、期待しているような「結果」は得られない。因果関係と相関関係をきちんと見分けることが重要である。因果関係と相関関係を混同してしまうと、誤った判断のもとになってしまう。
私たちが何か行動を起こす時には、結構なお金や時間がかかることが多い。因果関係があるように見えるが、実はそうではない通説を信じて行動してしまうと、期待したような効果が得られないだけではなく、お金や時間まで無駄にしてしまう。そのお金や時間をきちんと因果関係に基づいたことに用いれば、良い結果が得られる確率ははるかに高くなる。
因果関係を確認する3つのチェックポイント
因果関係なのか相関関係なのかを正しく見分けるための方法論を「因果推論」と呼ぶ。2つの変数の関係が本当に因果関係なのか、相関関係なのかを確認するためには、次の3つのことを疑ってかかると良い。
①「まったくの偶然」ではないか
ジブリの映画が日本のテレビで放映されるとアメリカの株価が下がる
②「第3の変数」は存在していないか
×体力がある子供は学力が高い
○子供の体力にも学力にも両方影響しているのは「親の教育熱心さ」
③「逆の因果関係」は存在していないか
×警察官の人数が多い地域では、犯罪の発生件数も多い
○犯罪が多い危険な地域だから、多くの警察官を配置している
この3つが存在しないということを、どのように証明すれば良いのか
その方法が、現実と「反事実」を比較することだ。反事実とは「仮に○○をしなかったらどうなっていたか」という、実際には起こらなかった「たら・れば」のシナリオのことを指す。因果関係の存在を証明するためには、原因が起こったという「事実」における結果と、原因が起こらなかったという「反事実」における結果を比較しなければならない。
しかし、現実には、事実は観察できても、反事実は観察することができない。こそのため、経済学者はどのような値をとるかわからない「反事実における結果」をなんとかもっともらしい値で埋めようとする。
比較可能なグループを作り出し、反事実をもっともらしい値で置き換える
①ランダム化比較試験研究の対象となる人々を、コインを投げたり、乱数表、くじ引きを用いて、介入を受けるグループ(介入群)と受けないグループ(対照群)にランダムに割り付ける。そして、2つのグループを比較可能にし、介入群が「もし介入を受けなければどうなっていたか」という反事実を対照群で穴埋めしようとする。
②自然実験
研究の対象となる人々が、法律や制度の変更、自然災害などの「外生的なショック」によって、介入群と対照群に自然と分かれてしまったという状況を利用して、因果関係を検証する。
③差の差分析
介入群と対照群において、介入前後の結果の差と、介入後と対照群の結果の差の2つの差を取る。但し、この方法が有効であるためには、「トレンド」が同じで、介入と同じタイミングで、結果に影響を与えるような別の変化が別々に生じていない前提が必要である。
④操作変数法
「原因に影響を与えることを通じてしか結果に影響を与えない」という操作変数を用いて、介入群と対照群を比較可能な状態にする。この方法が有効であるためには、操作変数は原因には影響を与えるが、結果には直接影響しないこと、第4の変数が存在しないことが前提となる。