解決策ではなく問題から始める
スタートアップの多くは、似たようなはじまり方をしている。まずは何かに不満を感じ、それから、他の人たちも同じ不満を感じていることに気づき、その不満を和らげる方法を探していく。「問題」の存在を教えてくれるのはいつも不満だ。その後で、それが大きな問題かどうか、つまり解決に値する問題かどうかを見極める。非常に大きな問題を解決したら、たくさんの価値が生まれ、成功できる。
まずは問題を見つけることから始めること。次に「その問題を抱えているのは誰か?」を考える。その問題を抱えている人がたくさんいるなら、その人たちのところへ行って話を聞き、問題をどのように「認識」しているのかを理解する。解決策を作るのは、それからだ。解決策から始めると、誰にも気にかけてもらえないものを作ってしまう危険がある。多くのスタートアップが消える理由は、PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成できないからだ。PMFを達成できない理由は、問題ではなく解決策にばかり目を向けているからだ。
問題から始める理由は、価値を生み出せる可能性が高くなる以外にもたくさんある。1つは、起業家が紡ぎ出すストーリーが、ずっとシンプルで人の心を掴むものになるからだ。ストーリーを聞いた人は、起業家が抱く不満を理解し、共感してくれるようになる。
早く失敗する
スタートアップの立ち上げは本質的に失敗の旅だ。起業家はこれまでに誰もしたことのないことをしようとしている。うまくいく道のりを見つける可能性を高めるには、単純により多くのことに挑戦するのがベストだ。そして、より多くのことに挑戦するには、早く挑戦して、早く失敗するのがベストだ。そうすれば、次のことに挑戦するのに十分な時間とランウェイを確保できる。
失敗の旅はいつでも、PMFを達成することから始まる。PMFが見つかれば、成功への道を進んでいる。見つからなければ死んでしまう。旅の各工程で、最も重要になるのは、どれだけ早くリカバーできるかであり、早くリカバーするには、早く失敗しなければならない。次のアイデアやコンセプト、テーマへの挑戦に向けて、どれだけ早く持ち直すことができるか。この「早く失敗する」手法を取り入れる起業家は単純に成功の機会が増える。
PMFが見つからないか、ユーザーが「その問題は本質的ではない」「あなたが生み出そうとしている価値は重要ではない」と言っている場合には、ピボットすべきだ。前提とする仮説を考え直すことが必要になる。
PMFを達成するか死ぬか
PMFを達成すれば、バリュープロポジションが見つかり、プロダクトはそれ以上変化しない。バックエンドでの変更はあるかもしれず、ビジネスモデルが作られ、スケーラビリティの可能性は山ほどの開発を必要とするが、価値創造は変わらない。
PMFの唯一の指標となるのは、ユーザーが留まっているかどうか、つまりリテンションだ。ユーザーが戻ってくれば、PMFは達成されている。B2Cでは純粋にユーザーの継続に目を向ける。今月初めてプロダクトを使い、3ヶ月以内に戻ってきたユーザーを数える。B2Bでは、追加で購入してくれた顧客に目を向ける。つまり、年間契約の更新や契約範囲の拡大だ。B2Bでは、新規顧客による初めての購入ではなく、同じ顧客による追加の購入が重要になる。
リテンションを高めるポイントは次の2つだ。
- ユーザーのファネル
- 新規ユーザー
ファネルの最上部は、獲得可能な最大の市場規模。ファネルの最下部は継続ユーザーである。ファネルの途中には、ユーザーがプロダクトを受容するまでのいくつかのフェーズがある。ある程度は、1人の新規ユーザーについて、アプリのダウンロードから価値を得るまでに、何が必要かを考えるべきである。
ユーザーのファネルを最大限に活用するには、次の2つを習得する必要がある。
- 指標
それぞれの障壁についての正確で一貫性のある測定値。改善の取り組みを集中させるべき場所を知り、改善できているかを判断する方法となる。 - 学習
それが障壁となる理由を理解するため、その障壁を通らなかったユーザーと話をし、シンプルに「なぜ?」と質問する必要がある。
プロダクトの側から障壁に対応するには、次の4つの方法がある。
- 取り除くか、ユーザー体験のより遅い段階に移動させる。
- シンプルにする。
- コピーやマイクロコピーを書く。
- 視覚言語を使う。
何より最も重要なのは、ユーザーの声を聞き、ユーザーを「観察」することだ。新規ユーザーを観察し、使うのをやめた人に理由を尋ねる。コンバージョンに関する問題を理解し、その見識をその後も使い続ける。そのため、必要となる唯一の指標はファネルの効率性で、唯一のロードマップはその効率性を高めるものとなる。
それぞれの障壁に1つずつ取り組み、それを取り除くために必要な行動を起こす。ユーザーを観察する時は「間違ったユーザー」はいないと覚えておくことだ。