美貌格差 生まれつき不平等の経済学

発刊
2015年2月27日
ページ数
254ページ
読了目安
332分
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美人は得をしている?
美人の方が所得が高く、社会において有利であるということを、学術的に調査している本。

美しさには希少価値がある

人が美しいかどうかを判定する共通の基準が存在するなら、美しさが取引を左右する。つまり何が取引されるかに美しさが影響する。人を雇う場合がそうだし、結婚という契約もそうだ。

難しいのは、ある人の美しさについて、人々は同じ意見を持つか、もし同じ意見を持つならその意見はどこまで一致するかという問題である。人々の間に同意が成り立たないなら、美しさの共通の基準だって成り立ちはしない。何をもって美しいとするか、人の意見は様々だ。つまり唯一絶対の基準なんてものはない。しかし、美しさに関する意見は似たものになりがちだ。だから、たくさんの人から美しいと評価された人達は、他へ行っても大体は同じように評価される事の多い特徴、つまり美貌を備えていると言える。そして、この特徴はだからこそ供給不足である。人の美しさは希少なのである。

見た目は収入に影響を及ぼす

美しさの基準が共通なら、容姿のいい働き手にはお給料のプレミアムが発生する。逆に容姿の悪い働き手にはお給料のディスカウントが発生する。プレミアムやディスカウントの大きさは、雇う側が容姿をどれだけ重視するかで決まる。

美しさはお給料にどれだけ影響するのか。収入と容姿を比較できるデータは1970年代のものしか得られない。このデータによれば、アメリカで容姿が収入に影響しているのは次の通り。

・容姿が下から15%(1〜2点)に入る、並みに満たない女性達は、容姿が並みの女性達より4%収入が低い。

・容姿が上から1/3(4〜5点)に入る、並みを上回る女性達は、容姿が並みの女性達より8%収入が高い。

・男性の場合、13%のペナルティと4%のプレミアムである。

収入の決定要因は、ダントツで教育である。アメリカでは、通学が1年延びるごとに、他の条件が全く同じ働き手より収入が大体10%ずつ増える。この数字は容姿が女性の収入に与える影響より少し大きい。一方、容姿の良さが男性の収入に与える効果は、1.5年分の通学の効果を上回る事になる。

大事なのは、収入は容姿とも他の特徴とも無関係に、たまたまで決まる部分があって、その影響はとても大きいという事だ。

また、データでは、容姿が並みより上か下かは、男が働いて稼ぐかどうかに影響してはいなかった。一方、容姿が並みより上の女性は、並みの女性に比べて、働いている可能性が5%ほど高い。容姿が並みより下の女性は、並みの女性に比べて、労働市場に参入している可能性が約5%低い。今日、25〜54歳で容姿が並みの女性は72%しか働いていない事を考えると、女性が働く可能性に容姿が及ぼす影響は少なくない。女性は男性より、外に出て稼ぐべく働くかあるいは働かないかの選択を行う余地が大きく、容姿がその選択を左右している。

美しい容姿が求められる市場での美形の価値

美しい容姿は市場が愛でるたくさんのものの1つに過ぎない。そして美しい容姿を市場がどれだけ愛でるかは仕事によって違う。美しい事が大事な職場での美形効果は次の通り。

・売春婦:魅力的と評価された女性達は、稼ぎが12%多い
・デート嬢:容姿が84%の人より上であると、取れる料金が11%多い
・政治家:現職でない候補の得票率に、統計的に有意にプラス。現職には影響なし

醜い人達は並みの容姿の人達ほど稼げない。そして並みの容姿の人達は美形ほどには稼げない。ブサイクだと門前払いされがちな仕事がある。そしてブサイクな人がそんな仕事に就いても稼ぎは悪い。結局、ブサイクな人は今後も、職場やデート相手探し、結婚、家探し、その他いろんな場面で社会から受ける差別にどうやって立ち向かうかという問題を、ずっと突きつけられるだろう。