DATA is BOSS 収益が上がり続けるデータドリブン経営入門

発刊
2024年2月15日
ページ数
216ページ
読了目安
307分
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データドリブン経営の基本
高級ホテル・旅館専門予約サイト「一休.com」の代表が、顧客の行動データをもとに、経営の意思決定をする方法を解説している一冊。

かつて、伸び悩んでいた一休をデータドリブン経営によって、急成長させた具体的な方法が書かれています。どのように顧客データを分析すればいいのか、一休ではどのような指標を分析しているのかを事例を紹介しながら、データを扱うために必要な考え方を学ぶことができる内容になっています。

データは顧客行動の隠れた価値を教えてくれる

データの本質とは「隠れた価値を教えてくれる」こと。会社には様々なデータが存在しているが、経営という観点で最も注目すべきデータは、顧客行動データである。これを適切に分析することで、顧客がなぜそのような行動を取るのか、メカニズムを教えてくれる。

 

データドリブンとは「データ主導で意思決定すること」に尽きる。定量情報と定性情報のどちらも大事だが、定量主導の方が定性主導よりも明らかに良い意思決定ができる、という考えがベースにある。その理由は、定量情報は網羅性、緻密さ、客観性、再現性を担保しているからである。

 

データドリブンではない意思決定が行われる原因は「定量情報≠定性情報」という状態が起きることになる。この場合、データだけに頼るのは危険だと解釈し、経験則や顧客感覚などの定性情報を重視して判断を下されてしまう。

 

本質的には、見ている顧客は同じなので「定量的な顧客理解=定性的な顧客理解」となるはずである。それが異なる場合は、どちらかがおかしい、ということになる。この時、取るべき策は、データ分析を掘り下げることである。顧客の定性理解と定量理解が不一致の場合、定量理解の方が間違っている場合がほとんどである。このデータ分析の掘り下げができるかどうかが、データドリブンで意思決定できるか、データを「参考程度」に勘や経験に基づいた意思決定をするかの最大の分かれ目になる。

 

データドリブン経営とは

経営とは結局のところ、「誰に何をするか」ということに尽きる。良い戦略は、次の2つが明確化され、その上で実行されている。

  • 誰に:自社のサービスを最も喜んでくれそうなターゲット顧客を見極める
  • 何をするか:ターゲット顧客が喜んでくれそうな商品やサービスを提供すること

 

これらを見極めるためには、顧客を徹底的に理解することが最も大事になる。常に、最初の問いは「誰に」になる。「誰に」は、絞り込むほど顧客の姿が明確になり、「何を」も的確に導き出せる。どんな企業や事業の競争戦略でも、その9割くらいは「ターゲット顧客は誰か」で決まっている。

そして、「ビジネスのあらゆる局面で、データ主(≒定量的な顧客理解)主導で、誰に何をするかの意思決定をするのが、データドリブン経営である。

 

顧客行動を見える化するため分析

財務データをどれだけ眺めようと、売上と利益の間のコストの削減方法は検討できても、売上をさらに伸ばすには役立たない。財務データの売上は、結果数値であって、売上に至るプロセスを表していないからである。売上を伸ばすためには、「売上に至るプロセス」と「顧客のリピートプロセス」こそ重要である。

 

【売上に至るプロセス】

①自社の競争環境を見える化する(売上=市場規模×シェア)

シェアを完璧に把握するのは難しいが、顧客アンケート調査などで十分に捉えられる。商品タイプ別、商品価格別、商品選定理由別、年齢・性別・居住エリアなど、ありとあらゆる切り口で、自社と他社の売上がどのように分布しているのかを理解し、競争関係を把握することが、効果的な戦略立案に有効である。

 

②顧客の購買プロセスを見える化する(売上=訪問者数×購入率×購入単価)

売上は「訪問者数」と「購入率(CVR)」と「購入単価」に分けられる。これを既存顧客と新規顧客に分け、さらにはヘビーユーザーやライトユーザー、休眠ユーザーなどの顧客セグメントに分解する。そうすることで、具体的にどの顧客セグメントで、改善の余地があるかが分かる。

 

【売上から利益に至る財務データ】

③顧客軸で売上を見える化する

顧客軸では、顧客ごとの購入履歴、顧客の行動パターン、顧客のデモグラフィック情報(年齢、性別、居住地など)などが挙げられる。これらの軸をもとに、顧客セグメントを作成し、各顧客セグメントの利益貢献度を明らかにし、最も価値のある顧客セグメントに焦点を当てた施策を行う。

顧客軸で売上を分解するには「利用金額」「利用目的」「顧客アクション」の他、販売チャネル、流入チャネル、エリア別、ライフスタイル別など様々な切り口がある。

 

④顧客軸でPLを見える化する

売上だけでなく利益まで顧客セグメント別に分解して、各顧客セグメントの利益貢献を明らかにする。最も価値のある顧客セグメントに焦点を当てた施策を行うためには、収益性の理解が不可欠である。

 

【顧客のリピートプロセス】

⑤顧客別のLTVを見える化する

事業を持続的に成長させるためには、売上を伸ばすことと、顧客当たりのLTVを黒字にすることが必須である。LTVの適正な期間での黒字化を「実績値」として確認することが必要である。

 

⑥顧客のリピート状況を見える化する

継続利用率は最重要KPIの1つである。継続利用率は事業に与える影響が非常に大きく、また事業の良し悪しの理由を明確にしてくれるという点で重要な指標である。