はじまりはいつも仮説
マーケティングというのは単なる宣伝活動ではないし、宣伝さえすればものが売れる訳ではない。根底にあるのはヒット商品のコンセプトを考え出すことである。マーケターに求められるのは、今は「正解はない」けれども、様々な取り組みを通して何とか「納得解」に辿り着くこと。いわば「正解を自分でつくり上げる」のがマーケターの役割である。そのためには「はじまりはいつも仮説」という考え方が最も大切になる。
正解がない課題を解決するためには、最初に「何となくこうなんじゃないか」という仮説を立て、その仮説を検証しながら正解をつくり上げていくことが必要である。そして、仮説は単に立てるだけでなく、実践して検証することが大切である。
ヒットの法則15原則(成功の5軸×3原則)
①コンセプトが生活者に受け入れられる
いいものをつくるのは大切だが、いいものをユーザーに手に取ってもらうためには、次の3つが最初からきちんと設計されているかどうかがヒット商品になるかどうかのポイントになる。
原則1:ネーミングのキレと理解しやすさ
原則2:手にとっても良いと思える値ごろ感(コストパフォーマンス)
原則3:中身・内容の良さが伝わる外見・デザイン・説明文
いいコンセプトだけど売れなかった商品があるのは、「値ごろ感」が大きく影響する。つくり手は製造原価から価格を考えるが、世の中にとってのコストは、自分が払えるか、払う価値があるかどうかである。
ヒット商品を生むためには、デザインも大切な要素になる。人間の認識は、情報の速さで言うと、色・形・文字・数字情報という順番に認識される。
②アイデアを具現化できる仕掛けがある
製品の設計によっては「つくりにくい」ものもある。どんな優れた商品コンセプトをつくったとしても、マーケターが現場のことを知らず、商品設計してしまうと「できるわけがない」「つくれやしない」が起きることになる。マーケターには「アイデアを具現化する力」が求められ、開発現場や製造現場のノウハウにも詳しい必要がある。そのためのポイントは3つある。
原則4:戦略は細部に宿る=細部にまでコンセプトの良さが感じられる
原則5:頭を使って気を遣う
原則6:お客さまの期待を裏切る驚きを込める
コンセプトがいくら素晴らしくても、それを詳細に再現できなければ価値が伝わらない。マーケターの役割の1つは優れたコンセプトをつくることだが、それを実現してヒット商品につなげるためには、生産現場などの細部を知り、細部にこだわり、頭を使って、気を遣って、人に気持ちよく動いてもらうことが大切である。
「優れた商品」をつくる上で大切にしたいのが、「消費者の期待を上回るプロダクト」になっているかという点である。商品コンセプトはいいけれども、実際につくってみるとそうでもないということがよく起こる。ヒット商品を送り出すには「期待を裏切る驚き」が不可欠である。
③その他大勢の中から選ばれるだけの魅力がある
商品コンセプトが良く、それを実現する仕組みができたとして、次にポイントとなるのが「競争優位性」になる。世の中にたくさんある商品の中から、お客様に選んで頂く必要がある。そのために必要なことは次の3つである。
原則7:唯一無二の独自のポジショニングを見出す
原則8:自分たちにしかできない、かつお客さまのためになる独自価値がある
原則9:三本の矢の構造(良い商品・手に届く・伝わる価値)を築く
中でも大切なのが「独自のポジショニング」をとれるかである。マーケターは、競争環境や社会環境、消費者の知覚構造も分析した上で、企画する商品について「唯一」や「絶対」という言葉が使えるかどうかを考える必要がある。「唯一」「絶対」を最初から目指してつくるからこそ、その商品はお客さまに驚きを与え、選ばれヒットする。
④儲かる仕組みが構造化されている
どれほどたくさん売れたとしても、最終的に儲からなければ意味がない。商品を開発するに際しては「儲かる仕組み」を考えておくのもマーケターの役割である。その際の原則は次の3つである。
原則10:売上高を要素分解:お客さまの数×お客さまの購入個数×購入単価
原則11:粗利益構造を強固にする
原則12:販売管理費を賄える単品PL構造をつくる
⑤社会全体に共感を生む価値がある
マーケターという立場から、将来的には、つくっている商品そのものが「社会に貢献し、社会から支持される」ものにならなければ、世のため、人のためになる商品には成長しない。そのためには次のことが欠かせない。
原則13:志が明確、かつそれを言えるだけの理由がある
原則14:事業がシンプルである(誰にでもわかりやすい)
原則15:不変の真理に沿っている