ダイアグラム思考とは
ダイアグラム思考とは「図形や文字を用いてモノゴトを多視点から構造化して可視化する思考法」である。「図解」には次の3つの力があり、これらは相互関係で成り立っている。
- モノゴトを多視点から観察する力
- モノゴトを構造化してシンプルにする力
- モノゴトを可視化して共有する力
複雑性が高く、どこから手を付ければよいのかわからないような問題でも、図解によって「多視点から構造化して可視化する」ことで、ロジックを明確にし、どこに何を集中すべきかが見えてくる。
ダイアグラム思考は、目的に応じて2つのモードを使い分ける。
モード1:インプットするための図解
情報をインプットする時に図解することで、自分のオリジナルな気づきが得られる。気づきの中には、抜け漏れや論理矛盾、新しい発見が含まれる。
モード2:アウトプットするための図解
情報はただ伝えるだけでは意味がない。情報を相手に伝えて、相手が情報を理解し、「相手が理解したことを理解した」ことを伝えることで、認識のズレがなくなり、コミュニケーションが成り立つ。
ダイアグラム思考のプロセス
ダイアグラム思考は3つのステップでモノゴトを素早く「多視点から構造化して可視化する」ことができる。
STEP1:モード選択
モノゴトを図解したい時、まず最初にやるべきことは「モード選択」である。「モード1」「モード2」のどちらのモードで図解を始めるかを決める。どちらのモードを使うかを決めることで、図解の過程で意識すべきポイントが異なってくるため、気づきの量が圧倒的に高まる。
モード選択後には、自分が理解したい、あるいは相手に伝えたいメッセージを「ワンライン化(1行にする)」しておくといい。情報を丸ごと全部図解しようとすると、情報の対象が広がりすぎて、図解できなくなる。そのため、情報から無駄な部分を削り出して、メッセージを抽出し、研ぎ澄まされた状態にすると図解しやすい。
図解の対象となるモノゴトをワンライン化するためのコツは次の3つ。
- 体言止めにしないで用言で終わらせる
- 意味の曖昧な言葉は使わない
- メッセージを1つに絞る
STEP2:カテゴライズ
図解したいモノゴトが、次の7つのビジュアルカテゴリの内、どれに該当するかを決める。ワインライン化したメッセージとビジュアルが合致することで、初めて図に意味を持たせることができる。
- 比較:2軸図(競合比較、優先順位整理、ポジショニング)
- 推移:プロセス図(業務フロー、プロセス、ステップ)
- 階層:ピラミッド図(ヒエラルキー、プロトコル、組織)
- 分類:マトリクス図(組み合わせ、ケースの想定、パターン分け)
- 構成:ツリー図(論理・ロジック、施策体系図、原因分析)
- 相関:モデル図(ビジネスモデル、利害関係図、ヒト・モノ・カネ、情報の動き)
- 範囲:ベン図(統計・分析、条件分け、重なり)
図解に1つの答えはないので、絞り込んだメッセージを最も気持ちよく図化してくれるビジュアルカテゴリを見つけられるよう、自由に思考を広げる。
STEP3:ビジュアライズ
7つのビジュアルカテゴリは、3つのアクションをすることで図を完成させることができる設計になっている。
①比較:2軸図
「高↔︎低」「増↔︎減」などの反対語を見つけたら2軸図で図解する。
- 縦軸と横軸を描く
- 軸名を描く
- 比較対象を描く
②推移:プロセス図
情報に「時間」「順番」「フロー」「循環」などが含まれている場合はプロセス図で図解する。
- 事象を洗い出す
- 時系列に並び替える
- 補足事項を付け足す
③階層:ピラミッド図
上から下へ、下から上に段階的な上昇や下降をするような情報があれば、ピラミッド図で図解する。
- フレームを描く
- 軸を描く
- 階層をプロットする
④分類:マトリクス図
箇条書きの文章を見つけたらマトリクス図で図解する。
- フレームを描く
- 行・列の見出しを描く
- 組み合わせ結果を描く
⑤構成:ツリー図
情報の抜け漏れを発見したり、抽象度を揃えたりしたい場合にツリー図で図解する。
- 上位概念(目的)を描く
- 抽象度を合わせる
- 枝葉を広げる
⑥相関:モデル図
ビジネスモデルが登場したら、モデル図で図解する。
- ステークホルダーの箱を作る
- 関係性を矢印でつなげる
- 相関している矢印に名前をつける
⑦範囲:ベン図
対象の情報にグループが関係する場合、ベン図を活用する。
- グループを円で描く
- グループ名を描く
- 重なっているグループ名を描く
ダイアグラム思考で作られる図には、余計な装飾は一切必要ない。情報はシンプルであればあるほど伝わりやすくなる。
ダイアグラム思考の本質は「振り返り」である。図が完成したら振り返りをする。振り返りをする時には、直接図に思考を書き込んでみるといい。図の「余白」に発見があったり、考察の糸口を拡大することができる。