話が通じない相手と話をする方法 哲学者が教える不可能を可能にする対話術

発刊
2024年2月2日
ページ数
400ページ
読了目安
633分
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コミュニケーションの質を向上させるためのテクニック
異なる考えを持つ人とどのようにコミュニケーションを取ればいいのかを、会話の基礎となる入門レベルから、極端な相手の考えを変えるための達人技まで、38のテクニックとして紹介している一冊。

揉める会話のためのスキルや、心を閉ざした人との対話スキルまで、難易度の差はあれど、実践的なことが書かれています。ちょっとした会話のテクニックで、コミュニケーションの質を高めるヒントが得られます。

よい会話のための基礎

節度のある議論のための基礎となる要素のほとんどは、「会話相手をパートナーにせよ、敵にはするな」という一言に集約できる。

 

①目標:なぜその人と会話するのか

議論を始める時に自分の目的を自分自身ではっきり理解しておく。

 

②パートナーシップ:パートナーであれ、敵になるな

他者の考えを変える、人間関係を築くためには、親切さ、思いやり、共感、尊厳・尊敬をもった言葉遣い、そしてこれらの配慮のすべてを心理的に安全な環境で発揮することが必要である。そのためには、自分を相手にとっての会話のパートナーだとみなすこと。会話のパートナーの思考を理解することを目標に据えて、協力的な考えを受け入れる。

 

③ラポール:良い関係を築き、保つこと

ラポールとは親近感の一種だ。ラポールを会話のパートナーとの間に築くことができれば、互いに共感し、信頼関係を築くことができる。ラポールを築くためには、誠実な質問をするように心がけることだ。見知らぬ相手なら、映画や音楽について、あるいは共通の友人とはどうやって知り合ったのか等の話題が初手として相応しい。

 

④傾聴:聞くのは長く、話すのは短く

人は話を聞いてもらえると深い満足を感じる。だから、良心と真心をもって話を聞くことによって受けられる見返りは莫大なものだ。話を聞かなければ、相手を理解することはできない。

 

⑤口をつぐむ:持論を一方的に伝えようとしない

会話というのはやりとりである。他方でメッセージは一方通行で運ばれる情報だ。人は伝達されたメッセージは拒絶するが、自分自身から湧き出てきたと信じている考えは受け入れる傾向にある。

 

⑥意図:人は想定よりも善良な意図を持っている

劇的に異なった考えを持つ人と出会ったら、その人が無知か、狂っているか、邪悪だと思ってしまうが、この傾向には抗うこと。代わりに、物事を別の視点から考えているとか、彼らが持ちうる最良の情報に基づいて行動しているというように考える。

 

⑦引き際を見極めること:会話相手のコンフォート・ゾーンから無理に出ようとしない

どのタイミングで会話を切り上げるべきかを知ること。パートナーの受忍限度を超えてでも会話を続けようというプレッシャーをかけてしまうと、相手は聞く耳を持たなくなり、自己防衛的になった末に、会話の質が変貌し、自分の立場が正しく相手の立場が拙い理由をお互いに示そうとする。その結果、ラポールは蝕まれていく。

 

人の考えを変えるための方法

介入とは、今信じていることへの自信を揺るがせることにあり、考えを変えるための最初のステップである。まず手始めに学ぶべきは、他人にしてほしい振る舞いの手本をまずは自分から見せること、そして質問を探ることに専念することだ。

 

①モデリングすること:他の人にして欲しいことの手本を見せる

ダイレクトに質問に答えて欲しいのなら、まずは自分がダイレクトに質問に答えてみせる。辛抱強く話を聞いて欲しいのなら、まずは自分が辛抱強く話を聞く。

 

②質問すること:具体的な質問に専念すること

会話で一般的な話題ではなく、具体的な質問に集中すること。開かれた質問は、パートナーが自分の考えを自らの言葉で、ある程度の長さを使って答えるような質問のことだが、これが会話の取っ掛かりとなる。閉じた質問は、特に「はい」か「いいえ」を求める質問だが、その先の議論が続かない上、会話を気まずいものにしてしまう。

 

③極論の持ち主の存在を認めること:味方がしでかした悪いことを指摘すること

道徳的な分断を乗り越えてパートナーからの信頼を勝ち取るためには、パートナーが気にかけている価値のことを、こちらも気にかけていることを示せるようにならなくてはならない。信頼してもらうためには、自分を敵チームから切り離してみてもらう必要がある。自分の側の極論を否定すると、簡単に同意を得られる。

 

④非難ではなく寄与について論じること:非難から寄与に切り替えること

非難してしまうと善意はおしまいになり、ラポールは消滅する。非難の代わりに、寄与を協力して見つけようとすること。何が起きたのかについての包括的な理解を相手と一緒に模索することで、解決策を探求する。

 

⑤認識論に集中すること:知っていると主張していることをどのようにして知ったのか探ること

会話で最もありがちな失敗とは、人が知っていると主張している内容は何か(結論)に着目するあまり、どうやってそれを知るに至ったのか(推論のプロセス)を疎かにしてしまうことだ。会話のパートナーがどのようにして結論に辿り着いたのかについての説明を促す質問をする。

 

⑦学びのチャンスを逃さないこと:何をすると相手が頑なになってしまうのか学ぶこと

見解を異にする人からこそ学ぶという姿勢をとると、相手は話を聞いてもらえていると感じる。一度話を聞いてもらい、理解されたと感じると、相手はより生産的で双方向な対話に心を開くようになる。

 

参考文献・紹介書籍