ドラッカーの遺言

発刊
2006年1月20日
ページ数
214ページ
読了目安
84分
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ドラッカーが日本人に向けて遺した最後の言葉
ドラッカーが亡くなる約3ヶ月前に残した日本人へ向けた言葉。日本の現状をどう捉えているか、どんな未来が待ち受けているか、これから私たちはどう生きていけば良いか、といった質問に対する答えが書かれている。

世界はどこへ向かっているか

・グローバル化した「情報」によって世界が強固に結び付く時代が来る。
異なる価値観が共存する新しい世界では、アメリカもその支配力を失う。
・新しい秩序へと向かう混迷した世界の中で、イギリスと日本が重要な役割を担う。
イギリスは大西洋をはさんで、ヨーロッパとアメリカを。
日本は太平洋をはさんでアジアとアメリカを結ぶ「橋」になることが求められる。
・私たちは今、「時代の変わり目」にいることを認識する必要がある。

 

日本はどうすべきか

日本が直面しているのは危機ではなく、時代の変わり目である。時代の変化を認識し、それに対応していく意識改革が必要である。

時代の変化とは、情報のグローバル化により、保護主義が通用しなくなったことである。自国の農業や製造業を守るために保護主義的な政策が採られることがあるが、グローバル化した情報と保護主義は相容れないものであると認識すべきである。

日本が直面しているもう一つの大きな変化に、労働の変化がある。これまでブルーカラーが担ってきた「労働集約」的な仕事は重みを失い、ホワイトカラーが中心を成す「頭脳集約」的な仕事、「知識労働」の重要性が増している。

 

現代の国際競争において意味を持つのは、唯一「知識労働における生産性」のみであり、その傾向はますます強くなっている。国際企業では、いかに効率的に経営できるか戦略を練り、研究・開発をコントロールしていくかに知恵を絞る知識労働が中心を成している。

知識労働の生産性向上に努めてゆけば、20年後の日本も、計画、設計とマーケティングなど、高度な頭脳だけを国内に残す形で、今と変わらず世界の製造業のメインパワーであり続ける。

 

イノベートせよ

東洋に属しながら西洋の一部になり得たことが、日本を成功に導いた最大の要因であるが、その結果、日本は非常にハイコストな国になってしまった。ハイコストな日本が生きていくためには、絶えざるイノベーションと、それによって生み出される価値を輸出し続けていくことが要求される。

一方、中国とインドは非常にローコストな労働力を豊富に抱えている。高コスト体質が慢性化した日本にとって、この両国は脅威を与え得る存在であり、同じ輸出国として欧米の市場を奪い合う中国が最も日本を脅かす存在となる。

 

情報経済が主軸となる新時代の世界経済のもとで、最も苦労する国は日本である。常にイノベートを追求し、新しい価値を生み出すことでしか、日本が生き残る道はない。

知識社会の伸展に伴って、個人のイノベーションも要求されるようになった。自分の強みを把握し、それに磨きをかけていく事が、成果を挙げ続けていく唯一の方法である。