博報堂のイノベーション・プロセス
博報堂のイノベーション創出プロセスは、以下の通りである。
なりたい未来
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持続的成長(持続的なPDCA/生活者体験のアジャイル的アップデート)
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実行(プロトタイピング/テストマーケティング)
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事業化(事業計画/統合的な生活者体験の具現化)
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事業アイデア創出(事業コンセプトデザイン/生活者体験アイデア創出)
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機会発見(自社シーズの棚卸し/生活者の潜在ニーズを掴む)
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なりたい未来(企業として目指したい未来/生活者や社会が求める未来)
博報堂のイノベーション・プロセス
イノベーションは技術主導で起こるのではなく、人間が構想し、カタチにすることで起こるという考えに基づいている。最初に「なりたい未来」を定めておくことは重要である。未来への意志を持って推進しなければ、イノベーションを阻む数々の障害を乗り越えることはできない。また、「持続的成長」が重要なのは、イノベーションはアイデアを実現して終わりではないからである。産み落とされたアイデアが市場を創造し、社会を変え、人々の暮らしを変えるイノベーションになるには、事業化した後の持続的成長が欠かせない。
博報堂は「生活者発想」と「パートナー主義」をフィロソフィーとしている。生活者発想とは生活者の視点に立って、その価値観の変化や心の欲求を読み解き、生活者の幸福を新たに創造すること。一方のパートナー主義とはクライアントと一体となって発想し、クライアントの事業成長に寄り添うことを指す。生活者の視点と企業の視点、2つの視点を行き来しながら思考する。そうした振り子の思考が新結合に寄与する。
「なりたい未来」から「持続的成長」に至る一連のプロセスは、実際には直線的に進むことはほとんどない。行きつ戻りつ、スパイラルを繰り返しながら構想を現実にしていくのが通常である。
なりたい未来に目を向ける
博報堂のイノベーション・プロセスでは、最初に未来の生活者に目を向ける。テクノロジーや経済、人口動態の変化によってこれからの社会がどのように変わり、生活者が何を求めるようになるのかを想像することが、未来の事業を考える上で欠かせない。
未来を正確に予測することは難しい。大切なのは、まだ顕在化していないシナリオも含めて、起こりうるかもしれない未来の可能性を広く探求し、そこから生活者にとって望ましい未来や、企業が目指したい未来を見つけていくことである。アートシンキングや未来洞察といった手法やアプローチは、そうした未来の探索に役立つ。
不確実な未来を見通すには
クリエイティビティとアートは密接である。なぜなら、アートとは、現状に対して何かを成長させようとか解決しようといった目的を必ずしも持たないために、人の創造性が最も自由かつ純粋に表出するものだからである。この現状に対する特定の解決策を持たないという、アートの特性を活かした思考法がアートシンキングである。
未来を予測する最善の方法が未来をつくることならば、既定路線の延長上ではなく、まだ誰も踏み出したことのない場所を見つけて発展することこそに、より大きな可能性がある。
アートシンキングでは、オープンな環境で良質な「問い」を受けることが、思考を広げるのに大事である。