ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本

発刊
2023年11月27日
ページ数
216ページ
読了目安
325分
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推薦者

顧客のロイヤリティを可視化する手法
定量化しにくく、具体的なマネジメントが行われないことが多い「顧客ロイヤルティ」を可視化する方法を紹介している一冊。

収益に直結する指標だけでなく、顧客体験価値を定量化し、顧客のLTVを重視するマーケティングの重要性を説いています。経済的な視点ではない、顧客視点に立ったファンづくりをするために必要な手法が書かれています。

ファンづくりと購買者づくりを同一化してはならない

「購買者づくり」と「ファンづくり」には、以下の大きな違いがある。

  1. 評価指標の明確性
  2. マネジメントの時間軸

この2つの違いがあるにもかかわらず、「ファンづくり」のマネジメントが「購買者づくり」のマネジメントと同一化してしまうという現象が起こる。

 

購買者づくりは、前輪駆動でぐいぐい引っ張っていくタイプ。短期的な成果、即ちOne Time Valueを重視し、広告、キャンペーン、セールなどのファネルマネジメントタイプの施策を展開する。ファンづくりは、後輪駆動で後ろから押し上げていくタイプ。中期的な成果、即ちLTVを重視し、CX施策や顧客満足度、コミュニティづくりなどのロイヤリティマネジメントタイプの施策を展開する。

 

顧客志向を掲げている企業は「ファンづくり」のKGIは心理的な視野で定義されるべきである。決して「ファンづくり」の活動を「購買者づくり」のKGI達成の手段に位置付けるべきではない。但し、「ファンづくり」活動を収益向上のKPIにはしないものの、収益への影響度合いを測ることは重要である。この場合、中長期の視野に立ったLTVを尺度として、「ファンづくり」のKGIが将来のLTVにどう影響しているかを評価すべきである。

 

ロイヤルティの定義

カスタマージャーニーの考え方では「購買」はゴールではなく過程であって、むしろ「推奨」がゴールに近いと解釈できる。ここでの最も重要な施策は、顧客体験向上施策になる。

 

では、ロイヤルティが高いお客様とはどのような状態のお客様か。ロイヤルティ状態を判断するためには、次の3つの視点が重要になる。

  1. 心理ロイヤルティ:信頼、愛着、応援、共創、価値観共有など。
  2. 経済ロイヤルティ:リピート、財布内シェア、価格など。
  3. 行動ロイヤルティ:イベント参加、情報収集、推奨行動、ライフスタイルなど。

 

定量化の視点では、経済ロイヤルティはデジタル情報として把握しやすい項目が多い一方で、心理ロイヤルティは定量化して把握するのが困難なロイヤルティである。行動ロイヤルティは、昨今のお客様のデジタルシフトが加速され、企業サイドから把握することが容易になってきた。

心理ロイヤルティがファンづくりに重要であると理解しながらも、定量化が難しいために精神論で片付けられるケースが多く、ファンづくりのマネジメントでは経済・行動ロイヤルティの指標による管理しかできていない状況に陥っている例が少なくない。

 

これら3つのロイヤルティの特徴から、ロイヤルティは「ブランドや商品に対して、信頼や愛着をもって末永く関係行動し続けたいと思う気持ち」と定義できる。ファンづくりの原点に立ち返る際には、この定義が非常に有効である。

 

心理ロイヤルティの構造化6つの法則

心理ロイヤルティの見える化は、次の6つの法則で行う。

 

①心理ロイヤルティは、複数のロイヤルティドライバーの満足から形成される(ドライバー満足度)

ロイヤルティドライバーは、次の2つの分類される。特に重要なのは、体験価値ドライバーである。

  1. 基本価値ドライバー:商品やサービスの核となる価値提供。(品揃え、商品機能、デザイン、店舗立地など)
  2. 体験価値ドライバー:基本価値提供時のタッチポイントでの価値提供。(接客、コンテンツ、検索機能など)

 

②ロイヤルティドライバーの満足は、ドライバーごとに心理ロイヤルティへの影響度が異なる(ドライバー琴線感度)

ドライバーごとに異なる心理ロイヤルティの影響度は、定量化し「ドライバー琴線感度」としてスコア化する。

 

③ロイヤルティドライバーは、お客様ごとに体験しているドライバーと体験していないドライバーがある(ドライバー体験率)

ロイヤルティドライバーの中には、限られたお客様しか体験していないものがある。体験率が低いドライバーは、量的視点で全体の心理ロイヤルティへの影響度合いが低いと判断する。

 

④ロイヤルティドライバーの満足は、複数のポジティブ・ネガティブ体験から形成される(体験頻度)

ロイヤルティドライバーのさらに下のレイヤーまで構造化することで、心理ロイヤルティの考察がより深まる。定量化においては、ポジティブ・ネガティブ体験ごとのお客様の「体験頻度」を算出してスコア化する。

 

⑤ポジティブ・ネガティブ体験は、体験ごとに心理ロイヤルティへの影響度が異なる(体験琴線感度)

心理ロイヤルティへの影響度合いは、ポジティブ体験では感動度合い、ネガティブ体験では落胆度合いとして解釈できる。お客様の日常の会話を定量化し、可視化する。

 

⑥定量化された心理ロイヤルティ関連スコアは、顧客セグメントごとに異なる

法則1〜5で定量化したスコアは、顧客セグメントによって異なる。全顧客を母数とした各スコアを出すとともに、顧客セグメントごとにスコアを算出して比較することで、現在の心理ロイヤルティを支えているのはどの顧客セグメントなのかなどの考察ができる。

 

※心理ロイヤルティの構造化

https://dxmagazine.jp/series/gjebu/