ローカルM&A 地方都市中小企業の「価値」と「思い」を次世代につなぐ究極解

発刊
2023年11月28日
ページ数
194ページ
読了目安
171分
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推薦者

地方都市の中小企業がM&Aをする前に知っておくべきこと
後継者不足を原因として、中小企業のM&Aが増え続けている。その中でも地方都市の中小企業のM&Aは、未だに情報格差があり、適切なM&Aが行われないことがあるとし、M&Aの基本、知っておくべきことをわかりやすくまとめている一冊。

どのようにM&Aを活用して、事業承継すれば良いのかを考える上で、地方都市にある中小企業経営者が知っておくべきことが書かれています。

中小企業の後継者不在問題

日本で行われているM&Aの多くは、未上場の中小企業を対象にしたものである。それは大企業よりも中小企業の方が会社や事業を売却するニーズが強いからである。その理由の多くは「後継者難」にある。

 

中小企業のオーナーである会長や社長は、心情的に自分の息子や娘に事業を継がせたいと考えるが、今の時代には息子や娘の意思も重要である。子供が親の事業に興味を持たない、事業経営に向いていないという事態は、日本中でかなりの頻度で起きている。そのため、たとえ事業が黒字であっても、後継者が見つからないために廃業をする企業も少なくない。

 

ローカルM&Aの特徴

未上場の中小企業のM&Aは、市場での株価がないだけに価格査定が難しく、また売り手と買い手のマッチングも困難になるため、専門のM&A業者の仲介を必要とする。東京であればM&A仲介会社も多く情報はいくらでも入ってくるが、地方都市となるとまだ情報格差があるのが実情である。

 

ローカル中小企業が行うM&Aは、一般的なM&Aとは異なる特殊性が見られる。ローカル中小企業の場合、その商圏がローカルエリアであるがゆえに、そこに興味を持つ企業が相対的に少ない。また、成長産業であればいいが、そうでなければ絶対的な企業数も少なくなり、ここにもローカルM&Aの難しさがある。

借入金の問題もある。ローカル中小企業の売り手側は、社長が借入金の保証人となっているケースがほとんどで、その連帯保証を解消することがM&Aの目的であることが少なくない。そのため、借入金の肩代わりと譲渡価格の合計がその会社の企業価値となり、それに見合うだけの魅力があるかどうかが焦点となる。

最後にアピールの問題がある。ローカル中小企業の魅力は、実際にその企業に足をのばして社長と直に話せる人でなければ引き出せないところがある。知名度のないローカル中小企業は、魅力があっても表に出にくい。

そのため、ローカルM&Aを成功させるには、手間はかかるが売り手企業に真摯に向き合い、その魅力をしっかり把握した上で最適な買い手を探す努力が不可欠である。

 

M&Aとは、お互いに「たった1社に出会えればいい」ものである。しかし結婚と同じで「本当にこの相手で良いのか」と迷い始めると、なかなか決まらなくなる。

そこで、仲介会社は売り手企業の中身を熟知するとともに、企業評価やスキームなどをアレンジして、買い手の希望に合うように仕立て上げる必要がある。このようなアナログなカスタマイズをいかにうまくできるかが、地方都市の中小企業M&Aの成否を分ける。

中小企業のM&Aに必要なのは、ただ譲渡契約を結んでそれで終わりではなく、「売り手の価値を買い手に引き継ぐ」ことで、売り手と買い手の双方が成長発展するという意識である。

 

ローカルM&Aの課題

①財務諸表の数字

未上場の中小企業の場合、実際には業績が良好であっても、数字がきれいに出ているとは限らない。例えば、節税のために経費を多く使うなど必要以上に黒字幅を圧縮している場合、財務諸表上ではそれほど業績の良い会社には見えない。

本来、企業の価値は単なる数字ではなく、その企業の持つ無形資産も含めて判断されるべきである。こうした数字に表れない「無形資産」の価値をどれだけ買い手に理解してもらえるかがカギになる。

 

②M&Aの知識不足

地方都市の中小企業経営者には、M&Aの正しい知識が行き渡っていないため、ブランドやネームバリューで仲介業者を選択する傾向がある。M&Aによる売却を成功させるためには、正しい知識と情報を得ることが不可欠である。

 

ローカルM&Aに重要な5つの要素

①ローカルエリアでの影響力

数字に表れない企業の無形資産の最たるものは、その土地や社会に根付いた存在感や信頼性である。買い手企業にとっては、その地方で長年やってきたというブランドの信頼性をM&Aによって獲得できる。

 

②従業員と顧客

買い手企業は、M&Aで買収する企業にどのような「人」がいて、どんな「製品やサービス」があり、どれだけの「顧客」がいるのかを、よく調べている。M&Aでオーナーが代わっても、従業員や顧客が離れていかないよう事前に十分なケアをすることも必要である。

 

③不動産や設備

モノの資産としての価値と、実際に使用して得られる価値とは別物である。他人から見たら古くて汚い機械であっても、今はもう入手困難な名機ということもある。

 

④商品・サービス

買い手企業が、M&Aの対象企業に興味を持つのは、その企業の事業が何らかの形で買い手企業の成長にシナジーを持つからである。その業界で一定の存在感を持つビジネスを行っていれば、誰かの目にとまるものである。

 

⑤ノウハウ

地方都市の中小企業と言えど、ローカルエリアで一定のシェアを獲得してきた企業には、独自の土着性マーケティングが存在する。それは買い手企業から見ると宝の山に見える。