ヒットの設計図――ポケモンGOからトランプ現象まで

発刊
2018年10月4日
ページ数
392ページ
読了目安
705分
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ヒット商品を生み出すためには何が必要か
心理学とネットワーク理論をもとに、ヒット商品を生み出すために必要なことを解説している一冊。

どうしたらアイデアを届けられるのかが重要

多くのヒット曲、人気テレビ番組、ヒット映画、ネット上の流行、誰もが使っているアプリなどは、突然出現したかに見えるかもしれないが、そういう文化的カオスも、必ず何らかのルールに支配されている。それは、人々が何か好きになる心理、アイデアが広まる社会的ネットワーク、カルチャー市場の経済学などである。

何かが他のグループに広がっていく場合にしろ、グループ内で拡散していく場合にしろ、それがどうやって広まるのかが非常に重要だが、それは正しく理解されていないことが多い。見たこともない数多くの歌や書物や商品のことを、じっくり考えてみようとする人は滅多にいないからだ。

新しい何かを世に出そうとする人が最初に考えなければならないのは、「どうしたらこのアイデアを『聴衆』に届けられるだろうか?」である。さらに深く考えれば「どうすれば私の『聴衆』が、そのまた『聴衆』に話したくなるようなものを作れるだろうか?」が次の問題になる。この問題を解く方程式はない。しかし、どのように人々の関心を集め話題に上がらせるかに関しては、いくつか基本となる事実が存在する。ヒットメーカーになるためには、人々のネットワークを理解することが不可欠である。

インスタグラムはなぜ成功したのか

インスタグラムの成功は、技術と宣伝、双方のたまものだ。インスタグラムの創設者は開始前に、サンフランシスコのテクノロジー業界の大物のところに、インスタグラムの初期バージョンを持って行った。これら業界の著名人たちが、ツイッターにインスタグラムの写真を何枚か投稿してくれた。そこは、合わせて何百万人というフォロワーが存在している場所である。インスタグラムは、既存の巨大なネットワークを利用して、製品を売り出す前から、既に何千人もの人々にアプローチしていたのである。

インスタグラムを成功させたものは、明快で楽しく使いやすい商品の魅力だが、同時にそれが乗り込んでいったネットワークの力でもある。

人はなじみのあるものを好む

有名な絵、ヒットソング、人気映画などは、いとも簡単に世に知られるようになったかに見えるものもあるが、そこには必ず隠れた発端がある。

人は、自分が前に見たことのあるものを好む傾向がある。「多少知っている」ことによって、それが何か重要なものだと感じられるので、その作品を好むのである。これは心理学で「単純接触効果」として知られている。人々は馴染みの形、景色、商品、歌、人声を、馴染みのないものより好むのである。

ヒット曲のリストを見ると、ある一定レベルを超えたものに関しては、メロディの魅力だけが大ヒットを生む訳ではない。それをするのは露出である。一定レベル以上のヒット曲であれば、本質的な魅力よりも、人々がその曲を何回耳にするかの方が人気に関係する。

メディアの数がずっと限られていた時代、人気はトップダウンだった。流行は今よりコントロール可能で、予測もしやすかった。だが現代は、スマホさえあれば、誰もが発信力を持つ時代だ。このボトムアップの世界では、何がヒットするかという予測は難しくなり、権威を守ることも困難になった。

どこかなじみを覚える驚き

わかりやすい考え方や商品は、脳で素早く処理され、私たちの気分もよくしてくれる。その考え方や商品に対してだけでなく、自分自身に対してもいい感情が生じるのである。これを「流暢性」という。「流暢性」を生じさせる大事な要素の1つが「なじみ感」である。よく知っている考え方は、脳が処理しやすく、メンタルマップの中に収納しやすい。

だが一方で、人には、なじみ感に加え、新しさ、チャレンジ感、驚きなど「発見を求める気持ち」を持っている。一番心に残る経験や商品には、むしろ、少々の驚き、予想のつきにくさ、わかりにくさなどが含まれている。

コツは、新しいアイデアを、これまでにあるものを一捻りしたかのように作ることだ。少しの「流暢性」に少しの「非流暢性」を混ぜ、視聴者や消費者に驚きを与えながらも、どことなくなじみ感を覚えさせることである。