知的資本論 すべての企業がデザイナー集団になる未来

発刊
2014年10月9日
ページ数
272ページ
読了目安
176分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

これから顧客価値を生み出すには何が必要となるのか
TSUTAYAを運営するCCC社長が、これからのCCCの経営方針を語った1冊。今後、顧客価値を生み出すものは何か。今後、CCCは書店、図書館、商業施設、家電の4つの分野でイノベーションを起こすとしている。

デザイナーでなければ、生き残れない

企業はすべて、デザイナーの集団となる。そうなれない会社は、これからのビジネスシーンで成功を収める事はできない。企業活動の本質とはクリエイトだ。それはメーカーに限らず、流通業であれば、店舗空間を創造する必要がある。

 

製品における「デザイン」が持つ意味は、いま急速に変わりつつある。モノとは2つの要素からできている。1つは機能、もう1つはデザインだ。現代の商品において、その性質を決定する機能とその外観を構築するデザインは、不可分なものであって、そのどちらが欠けても、それは商品としては存在できない。デザインが商品の本質である以上、そこにコミットできないスタッフは、すでにビジネスにおいては無用の長物だ。

 

消費社会は加速度的に変容している。その変容をリアルに感じられるセンスが、有効な企画を打ち出すための土台なのである。そのセンスは多くの場合、危機感をもたらす。その危機感がビジネスを前進させる駆動力になるのだ。

 

提案力こそが顧客価値となる

CCCという会社は企画会社だ。より有効な企画を提案する事によって、価値を生み出す。企画の価値とは「その企画は顧客価値を大きくするものであるかどうか」という、そのただ1点にかかっている。

 

例えばTSUTAYAの特徴の1つは、深夜まで営業しているという業態である。これは当時、皮膚感覚として、深夜まで映像や音楽のソフトや本などを買ったり借りたりできる方が便利だし楽しい、と感じられたから。顧客にとっての価値が大きくなると確信したから、こうした業態を取り入れた。つまり、顧客価値を高められるのであれば、いかにオペレーションの面などでの困難が増すとしても、それは克服されなければならないのだと考えた。そうしてTSUTAYAは生まれた。

 

顧客価値という視点から消費社会の変容を考えると、次の風景が見えてくる。

①モノが不足している時代
モノでありさえすれば売れる。

②モノがあふれる時代
モノを選ぶための場、有効なプラットフォームを提供できたモノがより大きな顧客価値を創出した者になる。

③プラットフォームがあふれる時代
単なるプラットフォームの提供だけでは、顧客価値の増大には寄与しなくなる。

 

現在の消費社会は、プラットフォームが無数にある。そこで実際に選んでいるのは顧客自身だ。次に顧客が認めてくれるのは「選ぶ技術」である。人ひとりの顧客にとって価値の高いものを探し出し、選び抜いて提案してくれる者。それが、より大きな顧客価値を生み出し、そして競争において優位に立つ事ができる存在なのだ。

 

だから「デザイン」なのだ。デザインとは可視化するという事だからだ。頭の中にある理念や想いに形を与え、顧客の前に差し出してみせる作業。それがデザインだ。「デザイン」とは「提案」の同義語なのだ。

 

今、私達が立つのは提案力の時代だ。提案とは可視化されて初めて意味を持つ。つまりデザインだ。提案を可視化する能力がなければ、つまりデザイナーにならなければ、顧客価値を増大させる事などできはしない。実際、優れたデザインとは、ライフスタイルの提案までがそこに内包され、表現されているものだ。そうしたライフスタイルの提案こそが、企画会社が果たすべき役割なのだ。

 

CCCでは「顧客価値」と「ライフスタイルの提案」という2つのシンプルなワードこそが、フィロソフィの中心に置かれ続けてきた。いくらお金があっても、それだけでは「提案」を創り出す事はできない。これから必要とされるのは「知的資本」だ。知的資本がどれだけ社内に蓄積されているか、それが死命を制する。