勘違いが人を動かす 教養としての行動経済学入門

発刊
2023年11月1日
ページ数
432ページ
読了目安
497分
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人が動く仕組み、間違える仕組み
人間の脳が持つ「認知バイアス」の事例を紹介しながら、人が不合理な行動をとる原因と対策が書かれています。
「認知バイアス」を利用して、うまく人を動かす方法や良い習慣を身につける方法など、実際の生活の中で役に立つこと、気をつけるべきことなどを学ぶことができます。

勘違いが人を動かす

古代ギリシャや古代ローマの時代から、人の行動を変えたい時は、その内容を言葉で明確に説明し、体系的な情報やロジックを示し、感情に訴えかけ、信頼できる方法で伝えることが大切だと考えられてきた。しかし、従来の方法に従って論理的に説明したり、情報を提示したりしても、相手が動いてくれるとは限らない。

 

私たちの行動は、環境にとって変わる。「一見すると小さなことが人の行動に大きな影響を及ぼす現象」を「ハウスフライ効果」と呼んでいる。この現象は、人間の先入観や偏見といった「勘違い」が原因となる。この勘違いは「認知バイアス」と呼ばれるもので、既に科学的に広く研究され、名称があるものも多い。

 

自分が思っているほど、自分自身についてわかっていない

自己表現力が高く、感情が豊か。同時に内向的で物事を自分の頭の中だけで考えがちである。これは、ほとんどの人が「他の人には当てはまらないが、自分には当てはまる」と受け止めることで知られている性格的特徴である。これは古典的な認知バイアス「フォアラー効果」であり、すでに前世紀から霊能力者や手相占い師によって使われていた。

人間は自分が思っているほど自分自身のことを知らないものだ。ハウスフライ効果は、この特性を利用しようとする。ハウスフライ効果を見つけ出し、そのトリックを理解するには、私たちはまず、自分自身に対する見方を変えなければならない。

 

人の行動は身体的作用、文化、状況が合わさって生み出される。これらの要素は複雑に関連している。私たちは、必ずしも思い通りに行動しているわけではない。しかし、人はこの事実を素直に受け取らず、別の思考に陥ることが多い。

人間の脳は、3億年に及ぶ生物の進化の影響を大きく受けている。そのため人の行動には、同族意識や、自己保存、短期的思考といったものが根強く関わっている。私たちがどれだけ脳の仕組みに関する知識を増やしても、頭で考えた通りに行動できないのはそのためだ。

 

自信過剰に気づかない

大抵の人は「自分の直感は正しい」「私は現実的な物の見方ができる」と考えている。そして、自分の考えを過信していることに気づいていない。「ダニング=クルーガー効果」は、あるテーマについて少しだけ知識がある人は、自らの専門性を過大に評価しやすいという認知バイアスだ。その一因は、断片的で浅い知識に基づいて、短絡的な決断を下してしまうことにある。

この効果が面白いのは、そのテーマを学ぶに従って、過信の度合いが下がっていくことだ。知識が増えるにつれ、自分がまだ何も知らなかったことに気づくからだ。

自信過剰の厄介な点は、そういう状況に陥っても「何かがおかしいぞ」という直感が働きにくいことだ。なにしろ、この過信そのものが直感から生まれているからだ。自己過信に陥らないためには、どんな状況にあっても「自分は特別だから、ゲームに勝てる」とか「自分の能力があれば巨額の資金を手に入れられる」などと思い込まないよう肝に銘じることだ。「人は自分を過信する傾向がある」とわかっていると、私たちは大局的に物事を見ることができるようになる。怪しいと感じた時は、人に意見を聞いてみることだ。

 

勘違いさせる脳の仕組み

私たちが勘違いしやすいのは、脳が目の前の現実のうち最も処理しやすいパターンに注目するように進化しているからだ。過去に認識したことのある何かと似ているものは、同じような物だと認識した方が効率がいい。だが実際には、そのパターンが現実を正確に映しているとは限らない。そこで脳は「意識」を使って、「自分の行動は正しい」と言い聞かせようとする。

 

どんな社会でも、その一員になるためには一定の常識的行動が求められる。そのため、適度な自信はあってもいいが、同時に謙虚さも十分に持ち合わせていなければならない。

 

意志に頼るより環境を変える

置かれている状況によって、私たちの行動は変わる。しかし、「人間の行動は性格によって決まっている」と考える人は多い。

ジムにいる時と教会にいる時、パートナーといる時と上司といる時、校庭にいる時とナイトクラブにいる時では、私たちの行動は違う。誰もがこの事実をわかっているはずだ。それでも、私たちは状況が及ぼす影響を低く見積もってしまう。

これは「禁煙する」「定期的に運動する」といった健康に関する目標を設定した場合にも当てはまる。大抵、私たちは意志や精神力だけに頼ってこうした目標を達成しようとする。しかし、環境が行動に与える影響の大きさを知っていれば、もっとうまい方法を取れる。意志に頼るのではなく、環境を変えることに注目するのだ。

 

「自分の行動は状況や環境に影響されている」と人が無条件に受け入れる時は、失敗した時だ。人は失敗した時に周りのせいにしがちだ。だが、成功した時には、自分の持って生まれた性格や気質のおかげだと考える傾向がある。自分の成功や失敗を一面的な視点からうかつに語るべきではない。

 

参考文献・紹介書籍