リーダーの黄金律
偉大なリーダーにはある種の共通パターンがある。それを参考に独自のリーダーシップのスタイルを作り上げた。これこそが、リーダーの黄金律たる「E5」である。これは、Eから始まる5つの構成要素からな理、カスタマイズ可能なレシピである。
①ビジョンを描く(Envision)
説得力のあるビジョンは、「なぜ」そのビジョンを描いたのかを明らかにすることから生まれる。そのビジョンが1人で考えたものであれ、社員たちとボトムアップ式でつくったものであれ、必ず「なぜ」そうするのかを明らかにする。「何をするのか」と「なぜそうするのか」を切り離して考えることはできない。「理由」はビジョンに意義を与え、鮮度を保ち、メンバーの意識を集中させる。また「理由」はビジョンが軽視されたり、忘れられたりするのを防いでもくれる。
様々な人格を持つメンバーたちの心を引きつけるビジョンを描くには、まず「チームメンバーが行動を始めるきっかけになるのは何だろうか」と考える。その答えを得るために重要なことは、まず観察して学ぶことである。
次の問いは、パワフルなビジョンを作り上げる助けになる。
- なぜそのビジョンを描くのか
- リーダーとしてどのぐらいそのビジョンのために努力しているか
- ビジョンが実現したら世界はどのように変わるだろうか
- ビジョンを実現するまでの歩みはどのようなものだろうか
- どうすれば私たちの目的を達成できるだろうか
- その道のりでチームのメンバーはそれぞれどんな役割を担うのか
②表現する(Express)
ビジョンを描いたら、次はビジョンを印象に残るように表現する必要がある。「表現する」とは、ただ周知することではない。メッセージや物語、行動を通じて、ビジョンに命を吹き込む。
現場の社員たちがビジョン実現の道のりに待ち構える困難、喜び、痛み、希望に理解と共感を示さないのであれば、ビジョンは無意味なスローガンと化してしまう。また、ビジョンが論理的すぎると、共感を得られない原因にもなりがちである。
ビジョンを表現する時も、部下との協力が必要である。周囲に意見を求めることから始めること。時間をかけて情報を集めれば、よりインパクトのある形でビジョンを表現できるはずである。効果的な伝え方における第一のルールは、相手と気持ちを通じ合わせること。特定の世代や性別、居住地域に限らず、すべての人の心に届くようにビジョンを伝えたいなら、絶対に従うべきルールである。
そして、何よりも、繰り返し伝えることが最も重要な秘訣である。ビジョンを伝達するコミュニケーションにおいて、やりすぎることはまずない。
③鼓舞する(Excite)
ビジョンの目的と影響力よりも、メッセージのうわべを飾り立てることに力を尽くすと失敗する。鼓舞するためには、何事もシンプルにすることが重要である。
好奇心には、驚異的な力がある。メッセージの冒頭で聴衆の好奇心を刺激できれば、聴衆は前のめりでリーダーの話に耳を傾ける。聞き手に積極的に関わることは、聴衆の心を鼓舞するための重要な第1歩である。
チームとミーティングする時にも、対話が生まれるようにすること。まずは相手が考えたり夢みたりしたくなるような質問をしてみること。「もしも〜なら、どうでしょうか」という質問は、聞き手の反応がすぐ表れる。
④可能にする(Enable)
準備を整える段階におけるリーダーの役割は、自分が何かをするということではない。他の人が何かをするために必要なツールを用意することである。リーダーは、チームメンバーそれぞれの生まれながらの得意分野を生かし、それをさらに極めるよう支援する文化の醸成を重視するべきである。
「可能にする」とは、部下たちと一緒にアイデアやビジョンを現実へと変えていくことである。その役割は、次の問いについて考えることとも言える。
- チームが目標を達成する道のりで発生する障害は何か
- 目標達成のための動きをもっとパワーアップするために、どんなツールや支援システムが必要だろうか
この段階では、有形無形の様々な支援を検討することが重要である。
⑤実行する(Execute)
実行する段階では、カイゼンとジュガールを組み合わせる必要がある。
- カイゼン
一連のプロセスを注意深く分析することにより、結果につながるプロセスを細かいステップに分解し、すべてのステップにおいてより良いやり方を見つける。 - ジュガール
インド人の精神の根幹をなす概念で、手に入る限られたもので何とかやっていく方法を見つけること。創意工夫のこと。
ビジョンを実現する道のりでは、プロセスと節目となる目標を明らかにすることが重要である。一方でビジョンを実行する時は、創造力、そして時には新しい試みをしてみようという感性が必要である。今、手元にあるリソースを活用して、目標を達成することを考える。