逆転の思考法

発刊
2023年9月26日
ページ数
240ページ
読了目安
262分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

優れたファンドマネージャーの株式投資法
JPモルガンの人気日本株ファンド「JPMザ・ジャパン」の元運用担当者が、これまで日本株で高いパフォーマンスを上げてきた投資手法を紹介している一冊。
王道の投資スタイルだけでは、他のファンドのパフォーマンス競争には勝てないとし、著者独自の投資の視点を解説しています。株式投資をする上での1つの考え方として、参考になります。

投資先を選ぶ基準

株式のアクティブ運用は、「良い企業に投資してずっと保有し続ける」というスタイルが王道である。世界的に通用する技術を持った企業は、高い収益力と、他の企業が容易に参入しにくいという強みを持っており、提供している製品・サービスの価格決定権を持っている。従って、景気の良し悪しに関係なく、常に一定の利益幅を得ることができる。そういう企業をしっかり選んで投資すれば、株価はその成長を織り込んで、着実に値上がりしていく。

とは言え、これでは、組み入れ銘柄がある程度似通ったことになりがちで、他のアクティブファンドのパフォーマンスの出方と同じ傾向になってしまう。そこで、他のファンドとの運用競争に勝つためには一工夫が必要になる。

 

良い企業ではなく、伸びしろのある企業に投資する。成長の余地がほぼなく、売上や利益率の改善が見られないような企業でも、経営者が交代したり、大株主が変わったり、世代交代が生じるなど、様々な要因で良い企業に生まれ変わるケースがある。会社が大きく変わると、株価は強く反応する。特に「利益の変化率」の大きさは株価にとっては重要である。

変化率と合わせて、投資先を選ぶ上で重要な要素が「認識ギャップ(意外感)」である。多くの人にとって、想像もできないことが現実化した時、投資家は慌てて買いに動く。認識ギャップが大きければ大きいほど、この傾向は一段と強まる。

 

そして、銘柄の選別基準として変化率の高さと認識ギャップの大きさにこだわって投資をするためには、「循環と相対」に目を向け、過去の歴史を調べ、様々な投資アイデアを練ることが大切である。

 

投資戦術における3つの視点

①変化率

例えば大赤字の企業が本格的なリストラに着手して、これから良くなっていこうとしているとか、業績じり貧のところが減損処理して、業績を悪化させている要因を一掃するといった材料が出た時は、企業が大きく変わる節目になる。

それ以外にも、経営者が変わる、大株主が変わる、あるいはアクティビストが入ってくる、技術開発に成功するといったことも、企業が大きく変わるきっかけになる。

 

②循環(トレンド転換/サイクル)と相対

株式市場では、大勢の人が「良い」と思っていることの反対側に、常に「駄目だ」と思われているものがあり、潮目の変化でお互いが入れ替わったりする。このように「相対」する動きが至るところで見られる。「大型株と小型株」「バリュー株(成長株)とグロース株(割安株)」「内需株と外需株」などが代表的なところで、資産クラス別でいうと「債券と株式」もそれに該当する。

もう1つマーケットを見る上で注目すべきが「循環」である。これはトレンド転換のことであり、マクロ経済も企業経営も「循環」するように浮沈を繰り返している。その変化率の大きなところに資金を投じるのが、株式投資でリターンをより高める、あるいは確度を高めるポイントの1つになる。在庫変動、設備投資、建設投資、技術革新など循環を様々な観点から探り、その循環の転換点を見つけるようにし、その循環に乗れる企業を探す。

 

③成長性

王道と言えるのがGARP(Growth at Reasonable Price)スタイルである。これは、グロース投資とバリュー投資の両方を組み入れた判断方法である。一般的には「中長期の成長性から見て割安な銘柄に投資する」というもので、業績の成長率、成長の持続可能性、PERなどの株価指標の水準や、それらのバランスを勘案して評価する。

まずは、逆説的にPERが高い企業を探すことで、市場から評価されている企業を探そうとしてみる。そしてPERが高いことにきちんとした理屈があるかどうかを見てみる。複数の企業を並べてみたりするうちに、見方が醸成されてくる。

また、その会社のPERを過去何年かと直近で、上がってきているのか下がってきているのかというトレンドでみる。加えて、市場全体の平均や、成長株全体の推移と比較できるといい。