バズコスメとは
「バズコスメ」とは、複数のSNSで話題が連鎖し、その結果売り上げが向上した化粧品。バズとは「1つの投稿が◯万リポストされた」といったような一時的な点の事象ではなく、X、Instagram、YouTube、TikTokなど複数のSNSプラットフォームにまたがり話題が連鎖していき、商品がヒットするくらいに生活者の心を動かした、という連続的な線の事象を指す。また、「話題が連鎖する」というのは、複数の文脈で発話が次々に起こり、その投稿を見た人がまた発話する、といった形で話題が追及していくことを指している。
美容のことをつぶやくXの「美容垢」(美容のことだけを呟く&情報収集する専用のアカウント)は、2017年頃から急速に増えた。「バズ」の起点は情報拡散が最もされやすいXであることが多く、そのXで美容についての発話が増えたことで、美容に関する情報が「バズる」ようになっていく。
「SNS売れ」した商品に共通する6つの法則
①購買者はInstagramとXで商品に出会っている
「バズコスメ大賞」に選出された10商品のすべてにおいて、認知経路はInstagramが最も多く、次いでXという結果になっている。さらに購入者を美容オタク・美容ミーハー・美容マスに分けた場合、美容オタクはX、美容ミーハーはInstagram、美容マスは店頭が最も多くなった。
②Xの情報を参考に購買が検討されている
ただ「認知した」というだけでは、実際の「購入」にはつながらない。SNSでの情報接点を点ではなく線で捉え、連鎖的な情報流通をイメージしながらマーケティング戦略を立てていく必要がある。また、美容オタク、美容ミーハー、美容マスでは、その流通経路が異なることも念頭に置かなければならない。
認知経路と比較すると、購買参考ではXの数値が顕著に伸びている。Xは匿名性の高さから本音の口コミが投稿されやすく、「失敗したくない」「自分に合うものを選びたい」と考える今の消費者にとっては信憑性の高いリアルな情報が得られるという点で参考にされやすい。また、検索機能が優れているため、自分にとってより必要な口コミ情報を入手しやすいという点も、Xが購買参考メディアとして選ばれる理由である。
③「3つのフェーズ」で話題化している
連鎖の起点となるような話題を創出するには「発売前」の期待値向上と情報拡散がとにかく重要である。このフェーズでの発話を担うのはアーリーアダプターである美容オタクである。その発話の多くは、美容オタクが愛用するXで見られる。商品の発売前から特に美容オタクと美容ミーハーの期待値をいかに最大限高めておけるかが、SNSマーケティングの成否を分ける。
商品の発売前に評判形成の基盤が築かれていると、発売時に口コミが数多く投稿されていく。既に美容オタクや美容ミーハーの間で評判となっており期待値が高いからこそ、実際にその商品を買って試した感想をいち早くシェアしたいというモチベーションが生まれる。このフェーズになると、情報を受け取り拡散していくのが美容ミーハー主体になってくるため、XだけでなくInstagramでも投稿が多く上がるようになる。
最後に発売後の評判定着フェーズに入る。Xで始まりInstagramで広まった話題がYouTubeやTikTokにも波及し、さらにメディアや店頭でも「SNSで話題の商品」として取り上げられるようになる。商品の人気が定着し定番化した頃、美容マスが認識し購買に動く。
④各フェーズで理想的な発話がされている
評判形成フェーズでは、成分の新規性や商品開発の経緯など美容オタクならではの着眼点のものが多く見られる。話題化のフェーズになると、「SNSで話題」など、トレンド感・話題感のある発話やインフルエンサーによる投稿が多く見られるようになる。最後の評判定着フェーズにおいては「コスパ」「定番」「初心者におすすめ」といった安心感を醸成する発話が増え、美容ユーザーの半分を占める美容マス層が購買を検討する際に参考にするようになる。
⑤「好感認知」が垂直型のファネルを生んでいる
好感認知とは、第三者の口コミなどを見て「なんか良さそう」という好感度が高い状態での認知を意味する。好感認知はその度合いが高ければ高いほど、購入への転換率は高くなる。そして好感認知を高めるために有効なのが、企業ではなく生活者が制作するコンテンツ(UGC)の活用である。
⑥「モノ軸」UGCが重視されている
商品情報をSNSで検索した際に、購入の後押しとなる投稿が、商品の特徴や使用感など「モノ」に焦点を当てた「モノ軸」のUGCである。「モノ軸」UGCを制作できるのは、主に美容オタクである。商品の魅力が具体的に伝わる投稿に触れることで、好感認知が高まりやすくなる。この「モノ軸」UGCは「発売前」「発売時」「発売後」のすべてのフェーズを通して露出させておく必要がある。