ロギング仕事術とは
ロギング仕事術のコンセプトは「記録とともに仕事を進める」である。仕事の合間に記録を残す。その記録は、これからやろうとしている未来方向への記録もあれば、会議で話したことなどの過去方向への記録もある。そして、それらの記録を使いながら仕事は進んでいく。つまり、記録を「残す」ことと「使う」ことが、ロギング仕事術の中心になる。
記録を残すと、次の3つのうれしいことが起こる。
- 情報を後から利用できる
- 自分のホームポジションを作る(仕事を脱線しても、本線に戻ることができる)
- 自分の情報が生まれる(自分の過去の記録や得意不得意などがわかる)
これらがうまく組み合わさることで、仕事の進め方はよりスムーズになっていく。
ロギング仕事術の進め方
ロギング仕事術では、何をどのように記録しても構わない。人が必要とする情報はそれぞれに違っているため、「これを記録しなければならない」と言えるものはない。しかし、「記録のための記録」は記録してはいけない。自分が何も興味関心を抱いていないのに「記録した方がいいから」という理由だけで記録してはならない。
記録は、注意を向けたいと思っていることから始める。それが最も続けやすい対象であり、続けることに意義が宿る対象でもある。「役に立つか」ではなく「うれしいかどうか」を基準に考える。
仕事をする上で記録しておくとうれしい可能性が高いものは2つある。
①実際にやったこと(作業記録)
計画やアイデアは何も思いつかないこともあり得るが、実際にやったことは必ず書くことが発生する。
作業記録のつけ方には、次の2つの方法がある。
- プロジェクト型:企画やテーマごとにノートを作り、そこにまとめて記録していく
- デイリー型:日ごとにノートを切り分け、その日にあったことを書いていく
作業記録を書き進める時には、次のポイントがある。
- 相手に伝えるように書く
- 記録をある程度絞り込んで、情報としての有用度を上げる
- 課題・問題を書く
- 記録に濃淡をつけて、見るべき場所をわかりやすくする
②これからやろうとしていること(タスクリスト)
予定を立てたり、計画を考えたりする時に記録する。やり方は、作業の直前に書く方法と、1日の始まりにまとめて書く方法がある。
タスクを書く時、あまり細かすぎると鬱陶しくなり、あまり大雑把だと使い物にならない。タスク記述は「よし、これからこれをしよう」と思うタスクの単位にする。全く同じ業務を対象としても、適切なタスクのサイズは人によって変わってくる。自分にとって一番自然な形と書き方がベストである。
タスクリストを作っても、すべてを達成できるわけではない。適宜、変更していけばいい。作業中にログを残しておけば、落ち着いてタスクの処理について考えられるようになる。
考えるために書く
「やったこと」を書いていると、「次はどうしようか」と考えるようになる。同様に「やろうとしていること」を書いていると、それを「やったこと」に変換したくなる。ログを書きながら仕事をしていると、このような記録の接続が自然に起こる。
書くことを通して「考える」が起きることが、目指したい地点である。記録しながら仕事をすることの一番の意義は、そうした「考え」が起こりやすくなる点にある。
普段考えないような対象について、普段考えないような長さで考えることが、ロギング仕事術では大切になる。人は忘れたことについて考えることができない。記録することによって、忘れられてしまうことについても思考の対象にできる。また、30分や1時間という短い時間だけでなく、1日、1週間、1ヶ月というスパンを対象に考えることもできる。
このように、普段は考えられないような対象について考えられるようになると、思考のバリエーションが増えていく。人の思考は、思考する対象との距離や角度によって変化する。こうした距離や角度の変化をうまく使うことが、思考を促す1つのコツである。
例えば「他人の視点に立つ」ことがその1つで、この変化は作業記録を誰かへの報告のように書いていると生まれる。また「視点を引く」も有用な変化で、それまでのログを通して眺めてみることでこの変化は手に入る。