街間格差-オリンピック後に輝く街、くすむ街

発刊
2019年1月9日
ページ数
267ページ
読了目安
295分
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これからは都内のどこに住むべきか
「働き方改革」に象徴されるライフスタイルの変化に伴い、住まい探しの絶対的価値基準「沿線ブランド」「都心まで○分」が崩壊している。
これからはライフスタイルに合わせた価値基準で、住む街を決めるべきだと説き、都内の街の特徴を解説している一冊。

住まい選びの価値基準が変わる

時代の価値観が変化する中、住まいはこれまでの、ただ「寝るだけの場所」、あるいは「投資対象」から、きちんと「住む」「暮らす」ということの効用を考える時代を迎えようとしている。

働き方改革によって、毎日「会社」という都心の建物に通い、与えられたデスクで決まった時間に仕事をする、というスタイルに変化が訪れつつある。人々が自由に働く社会が実現されれば、「通勤」という概念は世の中からなくなるかもしれない。勤労者の立場のまま、自分が「暮らす」場所で一日の大半を過ごす。その「街」で働き遊び、もっと根を下ろして生活するようになる。
そうなれば「住まい選び」はハードとしての家、交通利便性といったこれまでの価値軸だけでなく、その街、その住まいで過ごす意味を重視する方向へシフトしていく。

街間格差

これからは「東京だからいい」とか「会社に行きやすいからいい」、ましてや「価格が上がるからいい」といった観点での住まい選びから離れ、「この街に住めばどんな楽しいことがあるか」「暮らす街に自ら参加してその価値を高められるか」といった動機で住まいを選ぶ時代がやってくる。

地元のお祭りや行事を企画する。街の人々が触れ合う、三世代が交じり合う。これからの都内では、本当に「住む」幸せを感じることができる街とできない街との間に大きな格差が生じる。その先で生まれた「街」の魅力度に応じ、不動産価格に差が生じるようになる。

ライフスタイルに応じた街を選べ

働き方やライフスタイルの変化により、一日の大半を過ごすことになる「街」の選択こそ、今後の住まい選びにおいて重要となる可能性が高い。

①ブランド住宅街に住む(広尾、松濤、四谷、番町など)
東京のブランド住宅街は、ほぼ例外なく高台で地盤が良く、見晴らしの良い土地に形成されている。地震に強く、台風や豪雨による河川の氾濫に強く、単純に住むのに適している。さらに価格が大きく下落することが少ない。
また富裕層と付き合う機会が生じる。子供の保育園、学校などでの繋がり、お店での出会いなど、富裕層との付き合うで得られる人脈や情報は貴重なものも多い。

②湾岸タワーマンション街に住む(豊洲、東雲、勝どき、晴海など)
湾岸タワーマンション街は工場の跡地などを新しく開発したケースが多いため、古くからの住宅街に比べて環境が見劣りする。従前にあった工場によっては土壌汚染が残っていたり、周囲に薄暗い倉庫が残って物流トラックが行き交ったりするなど、必ずしも良好な住環境が確保されていないケースも多い。タワーマンションが林立する地域では、街の体をなしていない問題がある。タワマンの街ではマンション住民との交流がなかなか生まれない。
沿岸部のため塩害も深刻であり、大規模修繕は膨大な金額になる。

③オフィス街に住む(神田、日本橋、新橋、西新宿など)
これらの街には「人の匂い」がどうしても希薄である。かつての町内会や自治会のような組織も高齢化が激しくなり、そういう意味で「街」の活気が感じられなくなった。こうした地域に住まうのは、あくまで仕事に重きを置いた結果の「仮住まい」と考える方が無難。

④下町に住む(築地、谷中、根津など)
下町の良さとはそこに暮らす人々の息遣いや人情を感じたり、昔ながらの商店や飲食店を愛で楽しんだりすることにある。「街」を味わうにはそれが平面的に展開されていることが大前提になる。高層建築物では、人は上下に移動しなければならなくなり、建物内では移動中に目にできるものが少ない。徒歩なら「街」そのものが自然と目に飛び込んでくる。

参考文献・紹介書籍