最強AI TikTokが世界を呑み込む

発刊
2023年7月21日
ページ数
320ページ
読了目安
440分
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TikTokの経営戦略
TikTokを運営するバイトダンスがどのようにできて、なぜTikTokが人気を集めたのか。バイトダンスがこれまで辿ってきた成長ストーリーと、中国企業だからこそ伴う地政学の問題について書かれています。

あまり知られていないTikTokの裏側が取材されており、中国初のグローバルプラットフォームの抱える問題について、知ることができます。

ティックトックの誕生

バイトダンスは、ティックトックのオーナーであり、他にも世界トップレベルのアプリを運営する企業だ。2012年に創業され、2018年にはソフトバンクグループの出資を受けたことにより、その企業価値は1800億ドルに跳ね上がった。

そのアプリを世界で20億人が利用しているという事実にも関わらず、2020年の収益は340億ドルと、バイトダンスは西側諸国の中ではあえて目立たない存在でいる。主役は商品だと考えているからであり、それが創業者ジャン・イーミンの戦略なのだ。

 

バイトダンスは当初からグーグルレベルにボーダーレスな会社になるべくスタートした。バイトダンスは「内涵段子」というアプリを公開した。これはユーザーが画像などインターネット・ミームをシェアできるシンプルなアプリだ。これは大人気を博し、最盛期には2億人のユーザーを抱えるまで急成長した。

バイトダンスは「トウティアオ」という新たなアプリも開発していた。アプリを開くたびに、ユーザーは自分の好みに合わせたニュース価値のある記事を提供される。ユーザー数は増え続け、ユーザーがアプリを開いている時間もどんどん増えていった。さらにAIによって、アプリはより関わりあいを深め、ユーザーを夢中にさせることができるものになると、イーミンは気づいた。アプリ内でのあらゆる操作が追跡され、次回の体験をさらに楽しめるよう利用した。イーミンはスマホで使えるAI搭載アプリが未来に続く道だと気がついた。

 

2016年にはショート動画があらゆるところに広まっていた。バイトダンスは中国人がニュースからショート動画アプリをどう見るかをモニターし、これまで蓄積してきた莫大なアルゴリズムを適用できるどうかを判断することにした。そして、どうすればライバルに差をつけられるものになるか競合分析をした。そうしてショート動画アプリ「ドウイン」を公開した。2017年にはドウインの西洋版としてティックトックを公開した。

2つのアプリをライバルから際立たせたのは、とりわけ2つの特徴だった。1つ目は動画の長さ。2つ目は動画を提供する際のアルゴリズムだ。そして、最も大きな革新の1つは、どちらのアプリも非常に複雑なプロセスだと思われている動画の作成を容易にしたことだ。ユーチューバーになるのは、とりわけ動画作成の労力が必要という点で、1つのチャレンジだ。ティックトックやドウインなら、それはチャレンジでも何でもない。

 

どうやって人々を引きつけたのか

ティックトックは、2020年7月には6億8900万人が毎月ログインしており、その数はツイッターの2倍である。ユーチューブは設立から15年経って月間利用者数が20億人に達した。フェイスブックは13年かかった。ティックトックが現在の流れを維持できたら、おそらく1/4の期間で同レベルに達するだろう。

 

既に有名人であるかどうかは、ティックトックで成功するかどうかに関係ない。ティックトックでは、いわゆるバズる可能性が誰にでもある。ティックトックを通じて多くの有名人が怒涛のごとく生み出されている。

ティックトックのアルゴリズムが作用するのは、どのアカウントをフォローしているかを示すソーシャルグラフではなく、これまでどんなものと関わってきたかを示すコンテンツグラフである。1本の動画がほんの身の回りから世界中に広がっていけるのは、そのおかげである。

 

フェイスブックやインスタグラムといった古い世界では、社会階級が既に確立されており、人気度において普通の人が上に上がれるチャンスはほとんどなかった。それはユーチューブが長年抱えてきた問題である。だが新天地なら、集中型経済を運営することができる。ほとんどの富が人口のごく少数に流れ、まずその人たちが裕福になる。その後、彼らがロールモデルとなり、隣の芝生は青いことを見せつけ、少しでも多くの人を他のアプリから移行するよう促す。

 

ティックトックの問題

ティックトックの成長は、これが中国企業によって開発され、今もなお中国企業に所有されているという事実がもたらす問題もはらんでいる。このショート動画共有アプリは、東側諸国から西側諸国への大規模な技術侵害のためのトロイの木馬ではないだろうか。中国との結びつきが、アメリカやヨーロッパの地政学的なタカ派に大きな不安を与えている。

 

ティックトック問題は、日常生活に必要なテクノロジーの未来をめぐるある種の代理戦争の様相を呈している。その結果が、スマホにインストールしたアプリの今後の方向性や個人データの行方を左右する可能性がある。私たちはこの先25年以上にわたって、ティックトックの発展が世界中の人々にとって、そして安全保障、プライバシー、プロパガンダに関してどんな意味を持つのかを追跡することになるだろう。

 

参考文献・紹介書籍