グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない

発刊
2023年6月20日
ページ数
408ページ
読了目安
666分
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幸せになるための条件
ハーバード大学で84年間行われている「幸福の要因」を解き明かす研究の知見を紹介している一冊。
何が人の幸福な人生に影響を与えるのか。科学的な研究の結果から導き出された、幸福になるための鍵が書かれています。

幸せな人生とは何かについて、改めて考えさせられ、これからの人生において何に投資すべきか、生き方の指針となります。

幸福な人生に必要なのは「よい人間関係」

ハーバード成人発達研究は、人々の健康と幸福を維持する要因を解き明かすため、膨大な質問と様々な測定方法を活用し、同じ被験者群を84年間にわたって追跡調査してきた。すると身体の健康、心の健康、長寿との関連性において、際立って決定的な因子が浮かび上がってきた。それは、社会的成功や運動習慣、健康的な食生活ではなかった。明らかに重要性を発揮している因子は「よい人間関係」だった。

 

つまり、健康で幸福な人生を送るための唯一無二のベストな選択は、友好的な人間関係を育むことだ。一度きりではだめで、繰り返し、ずっと人間関係を大切にし続けること。これが、喜びに満ちた幸福な人生を送り続けるための条件だ。

 

人間関係の質が重要

家族や友人、地域社会とのつながりが強い人の方が、そうでない人よりも幸せで、肉体的にも健康だ。自分が望む以上に孤立している人は、他者とのつながりを感じている人よりも早い時期から健康状態が悪化する。また、孤独な人は短命だ。

 

ここでの孤独とは、他者と物理的に離れていることだけを意味するわけではない。知り合いの数は、人とのつながりや孤独感に必ずしも直結しない。生活環境や配偶者やパートナーの有無もそうだ。群衆の中で孤独を感じることもあれば、結婚していても孤独を感じることもある。むしろ、大事なのは人間関係の質だ。

重要なのは守られているという感覚だ。人生は楽ではない。苦難や老いの辛さから人を守ってくれるのは、心が通い合う人間関係だ。研究では、50歳の時の人間関係の満足度が高い人ほど、精神的にも肉体的にも健康な80歳を迎えていた。

 

なぜ人間関係が重要なのか

先史時代の人類が生き延びたのは、社会性があったからだ。生存競争を勝ち抜くため、身体と脳が仲間との協力を促すよう進化した。集団の安全を求める仕組みを持つ古い脳は、孤独にまつわるネガティブな感情を脅威と捉え、ストレスや病気を引き起こす。人間には心の通う関係が必要不可欠なのだ。

 

人は人間関係がもたらすメリットを予測するのが特に下手だ。人間関係は面倒で厄介だし、何が起こるか予測できない。だから1人でいることを好む人は多い。他者と関わることで起こりうる面倒を避けたいのだ。だが、面倒ごとを過大評価し、人とのつながりがもたらすメリットを過小評価するのが人間である。

 

幸せはお金で買えるのか

物質的な豊かさは幸せを決める条件だと、当たり前のように思い込んでいる人は多い。恵まれない境遇にある人は幸せになりにくく、恵まれている人ほど幸せになりやすい、と考える。だが、科学によれば、現実はもっと複雑だ。

 

人は一番目につきやすくて切迫したものに意識を集中してしまう。人間関係の価値は一定せず、数値化しにくいが、お金は数えられる。仕事の成果は履歴書に書けるし、SNSのフォロワーを増やしてくれる。数値として目に見えるものはときめきを与えてくれる。古い脳の反応がもたらす快感だ。

人生を歩むうちに、目に見えるものがどんどん積み上がっていく。ゆえに、追い求める理由を深く考えず、目標に据えて邁進してしまう。やがて、幸福の追求が、自分や他者の人生にポジティブな影響を与えるというレベルを超えてしまい、目標の追求自体が目的化してしまう。ひたすら生活水準の向上を求める堂々巡りの競争に陥ってしまう。

 

仕事の成功、社会的地位、自尊心、自由、決断、家族を養い、家族に喜びをもたらす力、人生の楽しみなど、お金はあらゆるものに結びついている。世の中と関わり、人生の様々な目標を叶える上で、お金が一番重要だと捉えるのも当然だ。
しかし、手段ではなく目的になる時、お金は欲望の対象の1つに成り下がる。

 

また、周囲の人を見る時に何に着目するかも、幸福度に影響する。研究によれば、他人と比較すればするほど、幸福度は下がる。他人との差が大きくなるほど、不幸だと感じるようになる。

お金がもたらす影響は単純で複雑だ。幸せはお金で買えるのかという問いの答えが見つからないのは、おそらく問いが間違っている。正しい問いは「幸せになるのに必要なものは何か」である。

 

完璧な人生を送る方法など存在しない

幸せな人生とは、時間をかけて展開していく1つの過程だ。波乱、安らぎ、楽しさ、重荷、苦闘、達成、挫折、飛躍、転落がつきものだ。幸せな人生は楽な人生ではない。完璧な人生を送る方法など存在しない。困難や苦労こそが、豊かな人生、幸せな人生をもたらすからだ。

 

幸せな人生は、ただのんびり気楽に待っていればやってくるものではない。幸せな人生はむしろ、避けることのできない試練に立ち向かい、今この瞬間を精一杯生きることから生まれる。私たちが誰かを愛し、愛されるために心を開く時、経験を重ねて成長する時、そして喜びや苦難を通して他者と固く結び合う時、幸せな人生は静かに姿を現す。

 

幸せな人生への道を歩むには、まず幸せな人生は目的地ではないと認識することだ。幸せな人生とは道そのものだ。人との交流を優先し、大切な人といることを選択すること。年を追うごとに、人生を豊かにし、人間関係を育むことで、人生の目的や意味を見出していくこと大切である。

参考文献・紹介書籍