インプットでは差がつかない
現代は、情報収集が格段にやりやすくなったことで、情報そのものでの差別化が難しくなった。つまり「インプットだけで差をつけることは難しい」時代になっている。
情報収集の段階で差がつかないと、アウトプットが似たり寄ったりのものになってしまう。「情報のインプット→それを踏まえてのアウトプット」というプロセスでは、ほとんど差がつかないのだ。「まず、なるべくたくさんの情報を集め、整理する」というスタンスでは、差別化が難しいどころか、時間もお金も無駄になる。
さらに、マーケット情報や競合他社の動向などを調べ尽くし、その結果として出てきた戦略や企画は大抵の場合「too late」であることが多い。既に他社が開発を進めてしまっていたり、ブームが過ぎ去ってしまっていたりする
「自分にとってのアウトプットは何か」から考える
情報収集の段階で差別化できないのなら、どこで勝負すべきか。それは「アプトプットから始める」ことである。「アウトプット」をまず意識することで、情報収集にかける手間を最低限にして、最小限の情報から最大限の成果を引き出す。情報に対する基本スタンスは「情報は整理するな、覚えるな、検索するな」である。
アウトプットから始めるために必要となるのは、情報に接する前に、自分の「スタイル」を明確にすることだ。次の3つを明確にした上で情報に接すると、情報収集のスピードが上がり、差別化もしやすくなる。
①情報活用の目的
目的はアウトプットのスタイルによって大きく3つに分かれる。それぞれ必要となる情報の内容も違えば、重視するポイントも違う。
- 意思決定の助けとなる情報
意思決定において、重要なのはスピードである。情報が多ければ多いほど、不要な情報も増える。膨大な情報の中から、何が物事の確実性を高める情報かを考え、何を捨てるのかといった視点で情報を集める。 - アイデアの元になる情報
いくら多くの情報を持っていても、それが新しいアイデアの創出に役立たなければ意味がない。問題意識は持ちつつも、無理に情報を集めたり整理したりせず、自分の脳内に集まった情報を泳がせた方が、思考が飛躍して新しいアイデアが出やすい。ここではデジタルを持ち込むより、アナログの情報整理の方が「情報の熟成」には適している。 - コミュニケーションの手段としての情報
いくら斬新なアイデアがあっても、その価値が相手に伝わらなくては何の意味もない。自分が面白いと思った情報を、他の人がそのまま面白がってくれるとは限らない。自分と相手の情報にはどういう共通点があり、どんな差があるのかを意識することが大事になる。
②立ち位置(ポジション)
立ち位置とは、その人の「仕事の役割」である。多くの会社で上司と部下のすれ違いが起こるのは、この「立ち位置」の違いが原因である。必要な情報のすり合わせができていない段階で、お互いに「これは売れます」「いや、売れない」などと押し問答をしたところで、結論は永久にでない。
③期待される役割
役割は、地位や肩書きだけで決まるわけではない。どんな組織にも、地位や肩書きとは別に、その人が暗黙の内に求められている役割がある。これを「期待役割」と呼ぶ。「どうしたら周りの人と差別化できるか」という期待役割の視点から自分のスタイルを考えることが重要である。
最もラクな差別化戦略
誰もがやっていることをやったところで、差別化にはならない。差別化を図るためには、情報収集から情報発信に至るプロセスの一部に、アナログを取り入れるのがいい。
・情報収集段階
デジタル:Google検索、ChatGPT、商用データベースなど
アナログ:自分の体験、人から直接聞いた話
・情報の分析・加工
デジタル:Excel、パワーポイント
アナログ:自分の手足を使う、独自の視点を持つ
・発信
デジタル:メール、SNS
アナログ:直接対話、電話、プレゼン
差別化の近道は、人のやっていないことをすることだ。それが今の時代においては「アナログ」である。「情報の収集」そのものにアナログを入れるというのが、最もわかりやすい差別化のポイントである。特に有効なのは「人の話を聞く」ことだろう。