資本主義の終焉と歴史の危機

発刊
2014年3月14日
ページ数
224ページ
読了目安
250分
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資本主義というシステムは崩壊する
ゼロ金利、ゼロ成長、格差拡大。先進国が抱える問題こそが、資本主義というシステムの終焉を意味すると解説する1冊。

資本主義の限界

資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、フロンティアを広げる事によって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムである。

資源を安く手に入れ、効率的に生産した工業製品を高い値段で輸出すれば、高い利潤を得る事ができる。逆に、高い値段で資源を手に入れた場合、価格転嫁ができなければ、利益は薄くなる。交易条件は国民経済を1つの単位として、1製品あたりどれくらいの粗利益を得ているかを表す。1973年の第1次オイル・ショック以降、原油価格の高騰により、交易条件は悪化し続けている。

 

交易条件が悪化しても、「地理的・物的空間」が拡大してさえいれば、販売個数を増やす事で、利益の総額は増やす事ができる。しかし、1974年以降、実物経済において先進国が高い利潤を得る事ができるフロンティアはほとんど消滅してしまった。「地理的・物的空間」の拡大は困難になり、資源を輸入して工業製品を輸出する先進国の交易条件が悪化し、「地理的・物的空間」に投資をしてもそれに見合うだけのリターンを得る事ができなくなった。つまり、ある一定期間資本を投下し、投下した分以上に利潤を得ていくという資本主義のシステム自体が限界に突き当たったのである。

 

資本主義の延命措置

こうした状況下、アメリカは、別の「空間」を生み出す事で資本主義の延命を図った。グローバリゼーションを加速させる事によって「電子・金融空間」をつくり、利潤を極大化させようとした。

「地理的・物的空間」で利潤をあげる事ができた1974年までは、資本と雇用者は共存関係にあった。しかし、グローバリゼーションが加速した事で、雇用者と資本家は切り離され、資本家だけに利益が集中していく。その帰結は、中間層を没落させる成長に他ならない。

 

そもそも「地理的・物的空間」がこれ以上広がらないから、利潤率が趨勢的に低下するという底流がある現代において、マネーを増やせばどうなるか。金融技術でレバレッジをかければ瞬時にして実物投資10年間分の利益が得られる。そんな状況では、量的緩和政策によってベース・マネーを増やせば増やすほど、物価ではなく資産価格の上昇、バブルをもたらすだけである。

 

資本主義が格差を生む

資本主義の本質は「中心/周辺」という分割に基づいて、富やマネーを「周辺」から「蒐集」し、「中心」に集中させる事にある。資本主義と結びついたグローバリゼーションは必ず「周辺」を生み出す。国家の内側にある社会の均質性を消滅させ、国家の内側に「中心/周辺」を生み出していく。そもそも資本主義自体、その誕生以来、少数の人間が利益を独占するシステムだった。20世紀までの130年間は、先進国の15%の人々が、残りの85%から資源を安く輸入して、その利益を享受してきたのである。歴史を振り返れば、資本主義は決して世界のすべての人を豊かにできる仕組みではない。

 

全地球が均質化する現代では、新興国や途上国の57億人全員が資本主義の恩恵を受けるチャンスがあるという「建前」で進んでいるが、それでは「安く仕入れて高く売る」という近代資本主義の成立条件は崩壊する。実際には安く仕入れる先はほとんど残されていない。

現代の先進国にはもう海外に「周辺」はない。そこで資本は、国内に無理やり「周辺」をつくり出し、利潤を確保しようとしているのである。世界のあらゆる国で格差が拡大しているのは、グローバル資本主義が必然的にもたらす状況だと言える。

 

未来を収奪する仕組み

「電子・金融空間」で収奪するというこの状況下で、我々が成長を追い求めるために行っている経済政策・経済活動は「未来からの収奪」となっている可能性が大きい。マーケットというのは、その将来価値を過大に織り込む事で、利潤を極大化しようとするから、結果的には将来の人々が享受すべき利益を先取りしている事になる。

 

資本主義は、未来世代が受け取るべき利益もエネルギーもことごとく食い潰し、巨大な債務と共に、エネルギー危機や環境危機という人類の存続を脅かす負債も残そうとしている。