AIと知性の定義
AI(人工知能)とは「コンピュータに知的な作業を行わせる技術」と定義される。人間が普段行う「知的な作業」の多くは、計算とは明らかに異なる。そのため、特別な工夫をしないと、コンピュータが人間と同じ作業を行うことはできない。その工夫で用いる技術こそが「人工知能」である。
AIが人間を完全に超えるためには、知性が必要不可欠である。高い知性を持っていることこそが、人間が持つ最大の特徴と言えるからである。知性とは「自分で考えて環境に対応し、より良い結果を達成する能力」と定義する。
現在のAIに知性はない
今のAIはどうやって「知的な作業」を実現しているのか。AIを実現するアプローチには、2つの考え方がある。
①強いAI
知性の仕組みを明らかにした上で、その仕組みをAIに搭載して、コンピュータに知的な作業を行わせる方法。コンピュータは、必要なことを自ら学んでいくことができる。しかし、このアプローチは、知性の仕組みをまだ誰も解明していなため、作り方もわからず、現時点では遠い夢である。
②弱いAI
知的な作業に等しい結果を得られる仕組みを、知的ではない方法を使って作る方法である。知的ではない方法で、知的な作業を行うためには、外部の知性に助けてもらう必要がある。つまり、人間に知的な作業の方針を設計してもらうのである。現在、すべてのAI研究者は、弱いAIに基づいてAIを作り上げている。
今のAIの作り方
今のAIを作る上では、次の3つが代表的である。
①教師あり学習
問題文と正解が書かれた問題集を用意し、問題文を読んで正解を答えられるように学習する。この時、「正解」は人間が決めている。AIはその正解にしたがって判断する。
②強化学習
定めた目標へ向けてAI自身に試行錯誤をしてもらうことで性能を強化させるという方式。目標は、報酬という形でAI設計者が与える。強化学習では、教師あり学習と違って問題集を用意していない。強化学習における問題集は、AIが試行錯誤する過程で自動的に作られる。
③教師なし学習
大量のデータの中からAIに何かを見つけてもらう方法。これは現状、「データの傾向を見つけ出す」という程度にとどまっているのが実情である。
近年、ニュースなどを賑わせているAIの大半は、教師あり学習か強化学習で作られている。教師なし学習はAIを作るよりも、データから新しい知識を発見する、データマイニングの分野で多く使われている。
AIにできること、できないこと
AIが知性を持つ上で必要な要素は以下の通りである。
①動機(解くべき課題を見つける)
解決すべき課題を定める力がなく、人が決めなければならない
②目標設計(どうなったら解けたとするかを決める)
何が正解かを定める力がなく、人が決めなければならない
③思考集中(解く上で検討すべき要素を絞る)
考えるべきことを捉える力は弱く、人の知見に頼る面も多い
④発見(課題を解く要素を見つける)
世界へとつながる要素を見つける力は、質より量でカバーされている
知性の4要素を組み合わせる力は、ほとんど手付かずである。現状のAIでは知性を実現できていない。特に「動機」や「目標設計」が大きな課題になっている。その大きな理由は、心や意識と行った科学で未解明な要素が強く絡んでいるからと考えられる。