心に刻むべき3つのルール
①時間こそが最も貴重な資産
ベンチャー・キャピタル(投資家)から資金を受け取る場合、そのお金にはタイムリミットがある。ベンチャー・キャピタルも、投資した資金を出した機関のために利益を生み出さないといけないからだ。そのため、ベンチャー・キャピタルからお金を受け取った途端、長くても5〜7年という比較的短い期間で大成功しなければならないというプレッシャーがのしかかってくる。
つまり、些細な戦術的選択から大きな戦略的決定まですべての行動を、それが成功を早めるのか遅らせるのかという視点で考える必要がある。
②優先順位を常に意識する
どうでもいい些細なことに夢中になってはいけない。これからの1時間、1週間、1年間で、一番重要なものが何かを常にはっきりさせておく。
③売れるまでは何も起こらない
起業すると、組織図から早期雇用決定まで、あらゆることに頭を悩ませることになる。しかし、結局のところ、売上がないのならどれも大したことではない。ビジネスで重要なのは顧客に自分のプロダクトを売ることである。それ以外はすべて二の次だ。
起業家に共通する性質
成功は明らかに運に左右されるが、創業者個人の資質も大きく影響する。それこそが、投資家が企業を査定する時にまず調査する要素である。素晴らしいアイデアがあったとしても、それを実現できる能力や心理状態にはないと投資家に判断されたら、投資は行われない。
起業家に必要とされる共通の性質は以下の通り。
- 不確かでもうまくやれる能力
- 売り込む才能
- EQとIQのバランス
- 組織と規律
- エネルギーと推進力
- やる気を促すリーダーシップ
- 自信
- 回復力
素晴らしいアイデアはどこから生まれるのか
シリコンバレーの神話のせいで、特に大学生ぐらいの年齢の若い創業者が魔法のように素晴らしいアイデアを思いつき、すぐにピッチデックを作成し、市場に参入すると思われている。だが実際は、創業者がアイデアを思いつくのは大抵、ある産業や分野に精通しているからだ。そうした人は、まだ誰も気づいていなかったり、その業界では市場を満たせないと思われていたりする市場の隙間に気がつくことがある。
但し、起業家は素晴らしいアイデアを思いついたからといって「そのビジネスが自分に適しているとは限らない」ということを考えなければならない。起業とは厳しい仕事だ。どんなアイデアでも、目の前のドアがすべてぴしゃりと閉ざされたとしても諦めないぐらい大事なものでなければならない。優秀なエンジニアがいなくなっても、あてにしていた資金調達がダメになっても、大口の顧客を失ってもやり続けられるのは、自分のしていることを心から信じているからだ。
もし、そのアイデアが本当に良いものなら、ほとんどの人にはそれが理解できない。マーク・アンドリーセンが言っているように、「何か良いアイデアがあるのなら、みんなにそれを受け入れさせなくてはならない」のだ。その理由は、素晴らしいアイデアとは、他の人が目に留めないものに気づく人から生まれるからだ。
そして、マーク・アンドリーセンによると、あるアイデアが適切なタイミングをつかむには、次の3つの要素がまとまらないといけないという。
- 技術面:このアイデアを実現するテクノロジーがあるか?
- 経済面:消費者にとって手頃な価格で生産し流通させられるか?
- 心理面:世の中に受け入れる準備ができているか?
この3つすべてを同時に満たせない限り、そのアイデアが成功する可能性はほとんどない。
顧客候補を特定し、口説き落とすための基本原則
①「数撃ちゃ当たる」は当たらない
企業向けプロダクトは通常、様々な業界にまたがる大企業向けになっているが、賢いスタートアップは2、3の分野に絞って始める。特定の需要や使用事例は、業界によってあまりに多岐にわたるため、すぐにすべてに精通するのは難しい。
自社のプロダクトが一番フィットしそうな業界を選ぶことから始めること。その分野の顧客を追い求め、上位3〜5社に絞る。そうした会社を勝ち取れると、その業界全体を獲得できることが多い。
②味方を探す
大企業は複雑な組織だ。社内で自社を推してくれる支持者がいないと、契約までこぎつけられない。その人物が大企業内部で自社の代弁者となり、契約に関してサインしてもらう関係者に、自社について詳しく説明する。
③自社プロダクトではできないことまで約束しない
顧客から、自社のシステムに特定の機能があるかと尋ねられると、つい「あります」と答えてしまい、急いで戻ってどうやって実現しようかと考えるが、これはよくない。嘘はすぐに発覚する。
できることとできないことについて誠実に対応すると、実は顧客から高い信頼を得られる。
④成長させてくれる顧客と働く
素晴らしいアドバイスをくれる事情通であり、味方になってくれる顧客と一緒に働く。