構造を読み解く力

発刊
2023年3月25日
ページ数
216ページ
読了目安
221分
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物事の読解力を鍛えるためのメソッド
構造を読み解くことができれば、文章や話の理解が深まるだけでなく、自分の思考力も高まる。あらゆる思考の根本でもある「読解力」を鍛えるため、「構造学習」という初等教育理論に着目し、それをわかりやすい形で活用する方法が解説されています。

日頃の業務や生活の中で、どのように思考力を鍛えることができるかという、ヒントになります。

構造を読み解く力とは

ビジネスは情報を理解し、分析し、解釈し、伝えて、他者とともに行動することの繰り返しで前に進んでいく。目から入ってくる情報にせよ、耳から入ってくる情報にせよ、それを理解するには文字通り「読み解く力」が必要である。そして、伝える時には、内容をできるだけ相手にとって「読み解きやすい」形で伝えなければならない。

 

「構造学習」は、戦後まもなく打ち立てられた初等教育の理論である。これは簡単に言えば「書かれていることの背景にある、著者・筆者の意図を自分なりに構造的に紐解く思考の訓練」である。この構造学習の理論と手法は、大人の仕事や生活にも有効である。構造の読み解きトレーニングを通じて、思考の質が高まり、仕事やコミュニケーションが楽になり、楽しいものになる。

この構造学習で培われるものを想定し、読解を通じて論理や心情の構造を読み解き、自身の思考を組み立てるのが「構造を読み解く力(構造読解力)」である。これは、次の3つの構成で成り立っている。

 

①論説的文章を読んで、論理を読み解く

②物語、情緒的文章を読んで、人の新庄を読み解く

③思考を組み立てて、解釈する/アウトプットする

 

論理を読み解く

論理を読むことができれば、言語や国籍を超えて世界で戦うことが一定程度できる。「相手がどういう根拠で何を言っているのか」を理解することは、私たちのコミュニケーション全般に欠かせない。

書かれたものを理解することは、その場で話されたことを理解する訓練にもなる。読解とは、人間の頭の中を読み解くことである。読解の第一歩は、説明や論説を中心に、他者が書いたものからその論理を読み解き、自分の思考へとつなげていくことである。

 

①見通しを立てる

対象となる一連の文章を一読した時点で、筆者の言いたいことの仮説を立てる。筆者の言いたいことを類推するためには、文章や単語を読んだ際に思い浮かぶ何かが頭のデータベースに必要になる。そのためには次のことが必要である。

  1. 多くを体験し、情報に触れ、データベースを豊かにする
  2. 日頃文章を読む際に、先の展開を意識的に予想してみる

 

②文章の構造を読み取る

文章を集め、その構造を分析してチャート化する。図示・チャート化するということは、文章に限らず物事の構造を把握するのに適している。読解の場合、構造とは筆者の意図を表す設計と言うことができる。設計・構造から、筆者は何を言いたいのかを読み取る。構造を図式化するには、次の2点が重要である。

  • 最も言いたいことが明確であること
  • 最も言いたいことと、他に書かれていることの関係性・構造が、わかりやすくビジュアル化されていること

 

③構造を把握するためのパターン認識を押える

多くは主張を根拠がどのように支えているのか、この構造が読み取れればいい。この主張と根拠の関係性にはいくつかのパターンがある。

  1. 演繹法と帰納法
  2. 段落構成(CREC、導入・内容・結論、起承転結)

 

人物の心情を読み解く

人には性格や育ち、その時抱えている様々な事情というものがあり、それは千差万別である。相手には相手の事情、心情がある、自分とは違うのだということを心して場に臨むのとそうでないのとでは対応も結果も違ってくる。

物語文の読解すれば、人物像や場面、場面における登場人物たちの心情などを読み取る訓練になる。

 

①人物になりきる

主人公の気持ちを考える上では、私たちの過去の経験や、その時の気持ちが大きなヒントになる。また、本で読んだり、映画やテレビで見たりした擬似体験も役に立つ。まずは、丸腰ではなく、相手の心情を読み解こうと努力し、想定して向かう、ということが大切である。

 

②主人公以外の人物になりきる

人は、主人公に感情移入して物語を読み進めることが圧倒的に多い。そこで、同じ場面の違う人物、それぞれの心情を想像してみることで、そもそも同じ場面に居合わせたとしても、思うことや考えることは違うのだということに気づく。

 

思考を組み立てる

構造理解を鍛えることは、思考を鍛えることであり、読解力はその有効な入り口となりうる。人が書いたもの、あるいは話したことに対して構造的な理解を試みるようになると、「違う構造の方がわかりやすいのに」「もっとこうした方がいいのに」といった改善案が浮かんでくるようになる。これを、自分がレポートや資料を作成したり、講演やスピーチを考えたりする際にもやってみる。

 

多くの情報の中から、自分にとって、相手にとって、重要な情報を抽出し、その関係性を認識し、納得がいくように証拠を紐付けて提示する、この行為が構造化である。こうした構造化の訓練は、日頃の業務において、議事録やレポートを作成する場面で行うことができる。