トヨタの1枚
トヨタには、業務上の書類はすべてA3またはA4サイズの紙1枚に収める、という習慣が企業全体の文化として根付いている。報告書、企画書、会議の資料や議事録、プレゼンテーション資料など、どんな種類の書類も、どんなに複雑な内容の書類も、原則「紙1枚」で作っていく。そうする事で、仕事の質も効率も飛躍的にアップする。
「トヨタの1枚」には3つの特徴がある。
①ひと目で全体が見える(一覧性)
②枠がある(フレーム)
③枠ごとにタイトルがついている(テーマ)
この3つの特徴が、読んでわかるのではなく、見てわかる「1枚」にしている。内容を説明する時にも、最低限の言葉で済むような作りになっている。「紙1枚に収める=一覧性を持たせる」だけで、何枚にもわたる書類より、ずっと伝わるものになる。さらに、フレームとテーマがある事で、読み手は「この部分には何が書かれているのか」がひと目でわかる。
トヨタの仕事の型
トヨタでは、どんな仕事でもベースに「1枚」の書類があり、その「1枚」をもとに仕事が進む。1つの案件に対して、担当者は最初に必ず「1枚」を作る。そこには共通する5つのテーマが掲げられている。
①目的
②現状
③課題
④対策
⑤スケジュール
会議の議事録も企画書も報告書も、この5つの観点から考えてまとめれば問題ない。5つがクリアになると、あとは行動を起こすだけとなり、仕事が進んでいく。
大切なのは思考の整理
「紙1枚にまとめる」作業は、3つのステップからできている。
①考えるベースとなる情報を書類に「整理する」
②自分なりの「考え」を書類に「まとめる」
③書類の内容を誰かに「伝える」
この3つのステップがしっかりと踏めていれば、最後に「資料化」するのはそれほど難しくない。「紙1枚にまとめる」上で大切なのは、資料そのものの作成法よりも、前段階の思考整理法である。打ち合わせのための「1枚」を作るなら、そもそも打ち合わせの目的は何か、打ち合わせで伝えたい要点は何か、相手はどこまで知っているか、相手に確認するべき事は何かなど、1つ1つの要素を考え抜かなければならない。
考えをまとめる方法
「紙1枚」にまとめる技術では、3つの素材を用意する。
①テーマ
②3色(緑、青、赤)のペン
③1枚の紙
テーマ、即ち「何について」という事を最初に決めておけば、人はその枠組みの中で必要な情報を取捨選択できるようになる。そして、そのテーマに関連する内容を探っていく事が情報を「整理する」ための第一歩である。頭の中のごちゃごちゃした情報は「1枚」の紙に書いていく。
①フレームを作る
まずノートに緑色のペンで4、8、16、32個といったフレームを書く。フレームは大きくならないようにする。
②キーワードで埋める
左上のフレームの中に「日付」と「テーマ」を書く。「テーマ」を書いたら、その答えを青色のペンで残りのフレームの中に書いていく。
③考えを書き出す
書き出された情報に対して、考えに沿って赤色のペンで印をつけていく。
紙に書き出すからこそ、頭のごちゃごちゃが整理され、紙を見ながら考えるからこそ、思考が逃げず集中できる。
読み手を意識せよ
書類をまとめるにあたり、どんな種類のものであっても、最初に立てるべき共通の問いは「そもそも何のために、この『1枚』を作るのか?」である。仕事で作ろうとしている書類は何のためなのか、その目的を明確にする。
そのためには、自分がこれから作ろうとしている書類の「読み手」をはっきりさせる。読み手をはっきりさせたら、次は「その相手にどのような反応をしてもらいたいか」を考える。読み手に配慮すれば、伝わる「紙1枚」につながる。