アメリカで唯一の日本人漫画家ミサコ・ロックスが語る「アメリカでチャンスをつかむ技術」②

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■アメリカ市民の100倍がんばる

小さい頃から、決めたことはやらないと嫌なタイプでした。昼寝も嫌いで、寝ていると何か見逃しているんじゃないか、じっとしているのがもったいない、と考えている子でした。

ライオンキングを見て、「そうだ! インターンシップをすればいいんだ」と思って、ネットでいろんな劇団のインターンシップを探して、日本から電話しまくりました。悩んでいる時間がもったいない。こうしている間に枠を取られるんじゃないかと思ったんです。常に恐怖感です。

私のモットーは「アメリカ市民の100倍がんばる」ということ。向こうが、10個目標を掲げてやるなら、私は100個目標を掲げてやらないと負けると思っています。だから、努力は惜しみなくやる。やっぱり、アメリカは実力社会ですから、それは住んでいると思います。

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■ニューヨークに住んでいたい

やっぱりニューヨークが面白い。私のようなアーティストがいっぱいいるし、世間の目を気にせず、自分のやりたいことを目標に向かってやっている人が集まっているのがニューヨークです。自分もその中の1人でいられるのだと思うと、どうしてもニューヨークに住んでいたいと思う。

セントラルパークに行ったり、ブルックリン・ブリッジで、マンハッタンを一望できる眺めを見て、私は本当にニューヨークに住んでいるんだなと、エネルギーを注入したりしています。

アート、ミュージック、モデル、それぞれの分野で、みんながんばっているし、そこには年功序列もない。実力があればチャンスをつかめる。自分のプレゼン力とキャラ次第でどうとでもなる。そういう魅力がニューヨークにはあります。

■成功するために必要なのは、営業力?

成功するためには、もちろん運と努力は必要です。それと重要なのがハッタリ。日本人は褒められても「いえいえ、そんなことないです〜」と謙遜する。しかし、向こうでは褒められたら、必ず「ありがとう」と肯定しないといけない。マイナス面を見せるのは、ビジネスでも恋愛でもタブーです。謙遜していると「あなたは自信がないのか」と思われるんです。

たとえば出版社にアポを取るとき、電話でも自信がないと声に表れます。だから私が最初にやったのは、自分の前に鏡を置くこと。鏡に映る自分を見ながら、ニコニコして電話をしていました。

さらに、マニュアルを作って、「こんにちは! ◯◯です」と練習していました。電話もあまり長いと嫌がられるので、一分でどれだけ自分のことを簡潔に話せるかを練習しました。とにかく電話でとちっちゃダメ。いかに簡潔に自分のプロフィールを伝えるかが勝負なんです。

■迷惑がられても、押して押して押す

ライオンキングには入れませんでした。ライオンキングは、本当に一流の人形をつくる人形師しか入れないところでした。だから、小さい劇団の裏方をやろうと思って、マンハッタンにある小さい劇団に電話しました。「経験はないのですが、是非インターンをやらせて下さい」と言ったら、そこはいろんな国際的な学生を受け入れているところだったので、いいよと言われました。

ただし、ビザを発行できないと言われたので、自分でビザを取得しなければなりませんでした。そこでまた調べで、青山にある国際教育機関が、インターンを派遣しているというのを見つけました。ただ、インターンといっても、そこは日本語の先生を斡旋する会社だったんです。

私は、どこに行くか決めていたので、個人でやりたかった。だから、プレゼンして「スポンサーになって下さい」と頼み、3、4ヶ月通いました。向こうからすれば、「また、来たよ」と迷惑だったでしょうけど・・・。

断られてもめげません。私、打たれ強いんです。拒否されればされるほど、燃えるタイプです。どうにかして、振り向かせてやると。恋愛もそうでした。押して、押して、押す。だから、日本男子には全部逃げられましたよ。外国人男子は、その押しが好きだったんですけど。

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■私、ホームレスになりました

結局、ビザを発行してもらえることになり、ニューヨークに渡りました。しかし、そこで理想と現実の壁にぶつかりました。その劇団で、人形師として食べていけるのは本当に一握りで、他は学生がインターンでやってますみたいな感じの、いわゆるボランティアの集まりでした。行ってからわかったのですが、すでに遅かった。

食べていけない上に、知り合いも全然いなかったので、一時はホームレス状態にもなりました。大家から突然、「明日出て行って」と言われてしまったんです。

マンハッタンの公園では、他のホームレスのおっちゃんが寝ていたりしたんですけど、場所を見つけて新聞紙を敷いたりしました。まあ、夏だったので、死なないとは思っていましたし、最終的にはどうにかなるだろうという勢いでした。

夜中近くになるとスーパーの周りに誰もいなくなるので、ゴミ箱の中の食べ物を探しに行っていました。アメリカのスーパーのゴミ箱はめちゃくちゃ大きいんです。そこに「ダンプスター・ダイブ」といって、中に飛び込んで食べられるものを漁って、リュックに入れて帰る。意外に新鮮なものが多くて、ピーマンやたまねぎ、ベーグルなどがたくさんあり、それで食いつないでいました。

■著者情報

ミサコ・ロックス

コミックアーティスト。NY在住。
法政大学在学中に奨学金派遣留学で渡米。卒業後、単身アメリカに渡り人形師、中学校の美術講師などを経て漫画家に転身。ディズニー・ハイベリアン出版会社から2作出版。

著書『Rock and Roll Love』がNY公立図書館ベスト・ティーンズ・ブックの1冊に選ばれる。
雑誌DFCの連載作品 『Peach de Punch!』がアジア向けの英語教科書に採用。

NHK、BBCのテレビドキュメンタリーに出演後、雑誌日経ウーマンのウーマン・オブ・ザ・イヤーの1人に選ばれる。
全米各地で講演会やワークショップにも力を注ぎ、世界で活躍を広げている。

■ウェブサイト

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